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なまぐさ坊主の聖地巡礼

プロフィール

ホンジュン

Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
 毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴りながら、仏教や歴史について語ります。

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法華経安楽行品第14 第2の在り方=非難せず歓喜と満足を与える

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 そのほかさらに、文殊師利よ、ブッダが完全なる滅度に入った後で、〔恐るべき〕後の時代、後の状況において、後の500年に、正しい教えの滅亡が進行しつつあるとき、この法門を説き示すことを欲する偉大な人である菩薩は、安楽の境地に住していて、体現されたか、あるいは写本にされた法を説くのだ。

 また、他の人たちに教えを説き示しながら、その菩薩は、度を越して人を難詰するようなことはない。また、説法者としての他の男性出家者たちを非難することもなく、誹謗を口にすることもなく、中傷を発することもない。声聞のための乗り物に属する他の男性出家者たちの名前を挙げて誹謗を口にすることもなく、誹謗を他者にさせることもなく、それらの男性出家者たちに敵意を抱くこともないのだ。

 それは、どんな理由によってか?もちろん、それは、その人が安楽の境地に住しているからである。その菩薩は、法を聞くことを求めて次々にやって来る人たちのために、快く誰でも受け容れて法を説くのである。口論することもなく、また質問をされても、声聞のための乗り物という教えによって答えることはない。けれども、その菩薩は、質問した人がブッダの智慧を覚ることができるように、そのように答えるのである。

 
その時、世尊は次の詩を述べられた。

 「聡明なる菩薩は、常に安楽の境地に住していて、清らかで、心にかなった場所に高
 い座席を設けて、安らかに坐って、そのように安らかに法を説いている。

 また、その菩薩は、極めて適切な色の染料によって染められた清らかな色の修行者の
 衣を着て同じく黒い衣類を身に着けまた大きくてゆったりとした衣類を着ている。

 足をきれいに洗い、さらにまた頭と顔に油を塗って、足台がついていてカラフルな布
 できれいに覆われた座席に登り、そこに坐っている。

 また、一つのことに集中する熱心な衆生が集まって来た時、この法座に坐って、いろ
 いろな多くの話を簡潔にまとめてしてやるがよい。まさに、男性出家者たちや、女性
 出家者たちにも、

 また、男性在家信者や女性在家信者、王、同じく王子たちにも、その賢者は、常に嫌
 な顔をしないで種々の意味を持つ感動的な話を語るべきである。

 その時、それらの人たちから質問されたとしても、この菩薩は、その人に適切な意味
 をさらに示すべきである。そして、それを聞いて、それらの人たちが覚りを得ること
 ができるように、そのようにその意味のすべてを説き示すべきである。

 さらにまた、賢者は怠慢であることを避け、また怠慢館を生じさせることなく、倦怠
 感をすべて捨て去って、聴衆のために慈悲の力を起こすべきである。

 また、その賢者は、幾コーティ・ナユタもの多くの譬喩 ひゆによって、日夜に最高の法を
 説いて、聴衆を歓喜させ、まさにそのようにして満足させるべきである。また、そこ
 で決して何も見返りを求めてはならない。

ダウンロード

 んで食べる堅い食べ物や、噛まなくても食べられる軟らかい食べ物、同様に飲食物
 あるいは衣服、寝具と坐具、乞食 こつじき修行者の衣、病気に対する薬のことを考えるべきで
 はない。聴衆に対して決して何も要求すべきであはない。


 他方において、聡明な人は、『私も、これらの衆生も、ともにブッダになりますよう
 に。このように願って、私が衆生に安楽をもたらす「白蓮華のように最も勝れた正し
 い教え」
という法門を、私は、衆生の幸福のために世間において説き聞かせよう』と
 常に考えるべきである。

 私が完全なる滅度に入った後で、実に他者を妬むことなくこの法を説き明かす男性出
 家者にはいかなる時にも決して苦しみもなく障害もなく憂いや悩みもないのだ。

 その賢者には、決して誰も畏れさせることなく、打撃を与えることもなく、非難の言
 葉を浴びせることもまたないであろう。さらにまた、その賢者には、追放されること
 も決してないであろう。

 それは、その賢者が、このように忍耐力〔という基盤〕にしっかりと立っているから
 である。

 その時、私が言った通りに実践し、安楽の境地に住している賢者には、幾100・コー
 ティ・ナユタもの多くの威徳が具わっており、幾100劫を経てもそれらを言い尽くす
 ことはできないのだ。

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【 2022/12/30 05:32 】

第13章 安楽の住所(安楽行品第14)  | コメント(0)  | トラックバック(0)  |

法華経安楽行品第14 第1の在り方=善行と適切な交際範囲ー詩による説明

 ダウンロード

 するとその時、世尊はまさにこの意味を重ねて示しつつ、次の詩を述べられた。

 「ブッダが滅度に入った極めて恐ろしい後の時代において、おびえず、畏れることな
 く、この経典を説き明かすことを願う菩薩は、

 〝善い行ない〟と〝適切な交際範囲〟を守り、次に挙げるものたちと接触すること
 なく、清浄であるべきである。すなわち、常に王子や王たちと親しくなることを避
 けるべきである。
 
 さらにまた、王の従者である人たちと親しくなるべきではない。チャンダーラや、
 ムシュティカ(マウシュティカ)、酒におぼれた人たち、仏教以外の外道を信ずる
 ものたちとも全く親しくなるべきではない。
 
 〔小乗の〕律や、伝承された教えの集成である阿含経 あごんきょうに専念し、自らを阿羅漢であ
 ると思い込んでいる増上慢 ぞうじょうまんの男性出家者たちに親しく近づくべきでなく、破戒のも
 のたちを避けるべきである。

 嘲笑 ちょうしょうされるべき内容のおしゃべりに ふけっている女性出家者を常に避けるべきであ
 る。また、低俗なことにかかずらわっている女性在家信者たちを避けるべきである。


 現世においてわが身が空無となる滅度(涅槃)を求める女性在家信者たちと親しくな
 ることを避けるべきである。それが、〝善い行ない〟と言われるのだ。

 菩薩に近づいて、最高の覚りの獲得のために法について尋ねる人のために常に志が堅
 固で、恐れることなく、執着することなく説くべきである。

 女性や、去勢された男性たちと親しくなることを避けるべきである。また、高貴な種
 姓の家においても、夫のいない女性や、少女たちを避けるべきである。

ダウンロード

 安穏に過ごしているかどうかを丁重に尋ねるためであっても、それらの女性たちに決
 して言葉をかけるべきではない。また、豚肉を売るものや、羊の肉を売るものたちと
 親しくなることを避けるべきである。

 さらにまた、種々の生命あるものたちを娯楽のために殺害したり、
屠殺場で肉を売っ
 たりする人たちと親しくなることを避けるべきである。
 
 また、淫売のために女性を抱えている淫売屋の主人たちと親しくなることを避け
 るべきである。それと類似しているその他の舞踏者、棒術家、力士たちとも親し
 くなることを避けるべきである。
 
 遊女たちに親しく近づくべきではない。また快楽を売ることを生業 なりわいとしている
 他の男たちと自殺することも全く避けるべきである。

 また、賢者が女性のために法を説き示す時は、その家に一人で入るべきではないし、
 またニヤニヤと笑うようなことがあってもならない。

 食べ物を乞い求めるものが、繰り返して村に入る時にも、同伴する男性出家者を求め
 るか、そうでなければ心にブッダを念じ続けて入るべきである。

 ダウンロード

 これが、実に第一の〝善い行ない〟と〝適切な交際範囲〟であるということを私は説
 いた。それによって、このような経典を受持しながら、智慧のある人たちは日々を過
 ごすのである。

 その時、その菩薩は、劣った法や、勝れた法、中ぐらいの法、さらにまた因縁や業に
 よって作り出された法や、作り出されない法、そして真実の法や、真実でない法を全
 く行ずることがない。

 志の堅固な人は、『それは女である』と規定するべきでなく、また、『それは男であ
 る』と分別するべきではない。あらゆるものは生ずることがないという本性を持つの
 で、その菩薩は、あらゆるものを求めながら見るということはないのである。
 
 あらゆる点において、これが実に菩薩たちの〝善い行ない〟であると言われる。次に
 それらの菩薩たちの〝適切な交際範囲〟とはいかなるものかを明らかにするので、あ
 なたたちはそれを聞くがよい。

 これらのあらゆるものごとは、実在することなく、囚われることもなく、生じること
 もなく、くうであり、不動のものとして常に存在し続けていると、説き明かされた。こ 
 れが、賢者たちの〝適切な交際範囲〟と言われるのだ。
 
 意識の倒錯したものたちは、これらのあらゆるものごとを、実在しないものと実在す
 るものという二つの考えによって、また真実ならざるものと真実なるものという二つ
 の考えの面からみだりに分別し、さらにまた、現われることもなく、生ずることもない
 ものごとを、生じて、しかも存在していると、倒錯して妄りに分別しているのだ。

ダウンロード

 菩薩は、常にただ一点に心を集中して、あたかもスメール山がしっかりと安住してい
 るように、そのように安住して、それらのあらゆるものごとを虚空のように観察する
 べきである。

 これらのあらゆるものごとは、常に虚空と等しく、実体がなく、不動であり、妄想を
 離れていて、しかも常に存在し続けている。このように観察すること、これが、賢者
 たちにとって〝適切な交際範囲〟と言われるのだ。

 私が、完全ある滅度に入った後、私の示した出家者の正しい行ないを遵守している男
 性出家者は、世間においてまさにこの経を説き示すべきである。しかもまた、その男
 性出家者には、臆病な心は決してないのだ。

 また賢者は、適当な時に熟慮しながら室に入り、戸を閉ざしてから、このあらゆるも
 のごとを如実に賢明に観察し、立ち上がって、臆する心を抱くことなくこの法を説く
 がよい。

 その菩薩から、この世において法を聞く国王たちや、王子たちは、その菩薩のために
 守護をなすであろう。また、他の資産家たちや、バラモンたちのすべてもまた、取り
 囲んでその菩薩に検診するであろう。(つづく)

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【 2022/12/27 05:32 】

第13章 安楽の住所(安楽行品第14)  | コメント(0)  | トラックバック(0)  |

法華経安楽行品第14 滅後の弘教のための第一の在り方=善行と適切な交際範囲

第13章 安楽の住所(安楽行品 あんらくぎょうほん第14) 

ダウンロード (2)

 その時、文殊師利法王子(マンジュシリー)は、世尊に次のように申し上げた。

 「世尊よ、それは、なし難いことです。これらの偉大な人である菩薩たちが、世尊に対する尊敬の念によって、滅後の弘通のために果敢な努力をなすことは、最もなし難いことです。世尊よ、これらの偉大な人である菩薩たちは、〔恐るべき〕後の時代、後の状況において、この法門をどのようにして説き明かすべきでありましょうか?」

 文殊師利法王子からこのように言われて、世尊は、文殊師利法王子に次のようにおっしゃられた。

 「文殊師利よ、〔恐るべき〕後の時代、後の状況において、偉大な人である菩薩は、4つの在り方(四法)に立脚することによって、この法門を説き明かすべきである。4つの在り方とは、何か?

ダウンロード

 「文殊師利よ、この世における〔恐るべき〕後の時代、後の状況において、偉大な人である菩薩は、〝善い行ない(行処 ぎょうしょ)〟と〝適切な交際範囲(親近処 しんごんしょ)〟に立脚することによって、この法門を説き明かすべきである。

 では、文殊師利よ、偉大な人である菩薩は、いかにして〝善い行ない〟と〝適切な交際範囲〟に立脚するのであろうか?文殊師利よ、偉大な人である菩薩が、忍耐力を具え、感情を抑制し、心が制御された境地に達して、驚くこともなく、恐れおののくこともない心を持ち、怒りをあらわにしないこと、さらに文殊師利よ、偉大な人である菩薩が、いかなるものごとにも決して心を奪われず、あらゆるものごと自体に特有の性質をあるがままに観察する時、あらゆるものごとに対して誤った考えを思いめぐらさないこと、誤った憶測で分別しないこと、文殊師利よ、これが、偉大な人である菩薩にとっての、〝善い行ない〟と言われるのである。
 
 また、文殊師利よ、偉大な人である菩薩にとっての〝適切なる交際範囲〟とは何であろうか?文殊師利よ、偉大な人である菩薩が、王に親しく交わらず、王子たちにも、王の高位の大臣たちにも、王の侍者たちにも親しく交わらず、趣かず、仕えず、近づかず、また逍遥 しょうようするバラモンの弟子、遊行者、アージーヴァカ教徒、ニルグランタ教徒といった仏教以外の外道のものたちにも、詩書や論書に専念する衆生にも親しく交わらず、趣かず、仕えることがなく、世俗的なことに関する呪文を保持するものたちや、ローカーヤタ派のものたちに親しく近づかず、趣かず、仕えず、それらの人たちと親しくなることがなく、チャンダーラ(
旃陀羅 せんだら・シュードラの男性とバラモン階級の女性との間に生まれた混血種姓のことで、最も蔑視され、嫌悪された)、マウシュティカ(魔術師・詐欺師・欺瞞者と訳される)、豚肉を売るもの、鶏肉を売るもの、猟師、屠殺者 とさつしゃ、役者と舞踏者、棒術家、力士たちにも近づくことがないし、他の人たちにとってのそのほかの歓楽や遊興 ゆうきょうの場所にも近づくことがない。

 また、それらの人たちが近づいて来たとしても、随時に法を説くけれども、執着することなく法を説くのであって、それ以外に、それらの人たちと親しくなることはない。

ダウンロード

 また、声聞のための乗り物に属する男性出家者・女性出家者・男性在家信者・女性在家信者にも親しく交わらず、趣かず、仕えず、しかも、それらの人たちと親しくなることはない。また、これらの人たちが近づいて来たとしても、随時に法を説くけれども、執着することなくその法を説くのであって、それ以外に、そぞろ歩きの場所であれ、精舎の中であれ、それらの人たちと会う場所を持たない。文殊師利よ、これが偉大な人である菩薩の〝適切な交際範囲〟である。

 そのほかさらに、文殊師利よ、偉大な人である菩薩は常に、女性の心を得ようとするある動機を抱いて法を説き示すことがなく、また常に女性に会うことを願うこともない。また、高貴な種姓の家に近づくこともなく、少女、あるいは娘、あるいは夫のいない女性に話しかけるべきではないと常に考え、それらの女性たちに挨拶することもない。

 また、去勢された男性(不男 ぶなん)に法を説き示すこともなく、またその去勢された男性と親しくなることもなく、挨拶することもない。また、食を乞うためであっても、心にブッダを念じ続けることなくして、単独で在家の人たちの内部の部屋に入ることがない。

 しかしながら、もしも女性に法を説き示すことがあるとしても、その人はものごとに執着して法を説くことさえなく、ましてや女性に執着して法を説くことがないのは言うまでもないことである。笑って歯の列を見せることさえなく、ましてや心の思いの門である顔に表情の変化を見せることがないのは言うまでもないことである。

 修行の見習い段階の沙弥 しゃみ沙弥尼 しゃみに、男性出家者や女性出家者、少年や少女に興味を抱くことなく、それらの人たちを親しくなることもなく、会話をすることもなく、しかも、その人は独居して黙想することを重視して、常に独居して黙想することに専念している。文殊師利よ、これが、偉大な人である菩薩にとっての第一の〝適切な交際範囲〟と言われるのである。

 そのほか、さらに文殊師利よ、偉大な人である菩薩は、あらゆるものごとを不変の実体がないくうと観察するのである。すなわち、あらゆるものごとは、あるがままに存在し、倒錯せずにあり、あるがままの状態にあり、動くこともなく、動かされることもなく、後退することもなく、変転することもなく、常にあるがままの状態にあり、虚空のような本性を持ち、語源的説明や表現を離れていて、生まれることもなく、生ずることもなく、因縁やごうによって生じたのでもなく、因縁や業によって生じていないのでもなく、あるのでもなく、ないのでもなく、言葉で表現されることもなく、執着のない状態にあるけれども、あらゆるものごとは、意識の倒錯によって現われている観察するのである。文殊師利よ、偉大な人である菩薩は常に、あらゆるものごとをまさにこのように観察しながら過ごすのである。
 
 このように観察しながら過ごしている菩薩は、〝適切な交際範囲〟に住しているのである。文殊師利よ、これが菩薩にとっての第二の〝適切な交際範囲〟なのである」(つづく)

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【 2022/12/23 05:30 】

第13章 安楽の住所(安楽行品第14)  | コメント(0)  | トラックバック(0)  |

法華経勧持品第13 愚かな者や、悪意と慢心の出家者の誹謗に耐える

ダウンロード (9)
涅槃像(インド・クシナガラ)

 そこで、それらの偉大な人である菩薩たちは、次の詩を一緒に唱和して世尊に申し上げた。

 「世尊よ、あなたは、滅後の弘教について心配しないでください。あなたが完全なる
 滅度に入られた後、極めて恐ろしい真の最後の時代に、私たちはこの最高の経典を説
 き明かしましょう。

 指導者よ、愚かな者たちの侮辱 ぶじょくや、罵詈 めり、棒を振り上げることによる威嚇 いかくを、私たち
 は耐え忍びましょう。

 
ブッダが滅度に入られた後の恐るべき時代において、男性出家者たちは、悪智慧を持
 ち、心が歪んでいて、悪意があり、愚かで、慢心を抱いていて、未だ到達していない
 のに、到達したと思い込んでいるでありましょう。

 しかし、愚かな男性出家者たちは、荒野(阿練若 あれんにゃ)で生活していて、襤褸 ぼろをつなぎ合
 わせた衣を着ていることで『われわれは(小欲 しょうよく知足 ちそくを実行しているのだ』と、
 このように言うでありましょう。

 美味なる味覚の対象を貪欲に求め、また執着していながら、在家の人(白衣 びゃくえ)たちに
 法を説いて、あたかも6種の神通力(六通 ろくつう)を具えている阿羅漢であるかのように振
 る舞って、恭敬されようとするでありましょう。
 
 また、悪辣 あくらつな心を持ち、邪悪で、家や財産のことしか頭になく、そこに住むことで男
 性出家者であるかのように思わせることのできる荒野という保身のための場所に住ん
 で、私たちを誹謗 ひぼうするでありましょう。

ダウンロード (1)
インド・ギルギット出土法華経写本

 それにもかかわらず。私たちに対して次のように言うでありましょう。『ああ、情け
 ないことに、これらの男性出家者たちは、仏教以外の外道 げどうを信ずるもので、利得を得
 ること、称賛されることに執着し、自分たちの詩的才能を誇示している。

 自分で諸々の経典を作って、利得を得ることと称讃されることを求めて、集会の真ん
 中でそれを説いている』と、私たちをそしるでありましょう。
 
 国王、あるいは王子、王の大臣、同様にバラモン、資産家、さらにはまた他の男性出
 家者たちに対しても
 
 私たちのことを、『仏教以外の外道の論議をなすものだ』と、誹謗して言うでありま
 しょう。それでも私たちは、偉大なる聖仙に対する尊敬の念によって、そのすべてを
 耐え忍びましょう。

 また、その〔恐るべき後の〕時代において、その愚かな男性出家者たちは、『こいつ
 らはブッダになるんだってよ』と皮肉を言って私たちを誹謗するでありましょう。
 〔けれども、私たちを誹謗するこれらの愚かな男性出家者たちもまたブッダになるの
 であり、〕私たちは、あらゆる点で耐え忍びましょう。

 恐ろしい激動の劫(濁劫 じょっこう)において、激しく大きな恐怖の中で、ヤクシャの姿をし
 た多くの男性出家者たちが私たちをののしるとしても、
 
 世間の王〔であるブッダ〕に対する尊敬の念によって、私たちは極めてなしがたいこ
 とに耐え、忍耐という腹帯(忍辱鎧 にんにくがい)を身に着けて、この世でこの経を説き示しま
 しょう。

 
指導者よ、私たちは身体も、生命も実に惜しむことはありません。ただ、覚りを求め
 ているのであり、この法の弘通に関するあなたの委嘱(付嘱)を受持するのです。

 恐るべき後の時代における邪悪な男性出家者(悪比丘 あくびく)たちが、深い意味を込めて語
 られた言葉について、どのように無知であるかは、世尊がご存じであります。

ダウンロード

 まゆをしかめられたり、集会においてしばしば座席の割当がなかったり、精舎 しょうじゃから追
 放されたり、何度も種々に捕縛されたり、悪口 あっくされたりすることを、私たちはすべて
 耐え忍ぶべきであります。

 恐るべき後の時代において世間の保護者の命令を思い出しつつ、私たちは、集会の真
 ん中でおそれることなくこの経を説きましょう。

 指導者よ、この世にこの法の弘通を願い求める人たちがあれば、私たちは、それらの
 町や村に反復して行って、この法の弘通に関するあなたの委嘱をその人にも与えるで
 ありましょう。

 世間の王よ、私たちはあなたの派遣の命令を実行いたしましょう。偉大なる賢者よ、
 実にあなたは、安らかな心に達していて、大いに満足して、滅後の弘教について心配
 しないでください。

 世間の人々の燈明であるそれらのブッダたちが、十方からすべてやって来ておられま
 す。私たちは、ここで真実の言葉を語りましょう。あなたは、私たちの信順の志を了
 解してください」

 以上が、聖なる「白蓮華のように最も勝れた正しい教え」という法門の中の「果敢なる努力の章」という名前の第12章である。          (勧持品第13おわり)

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【 2022/12/20 05:23 】

第12章 果敢なる努力(勧持品第13)  | コメント(0)  | トラックバック(0)  |

法華経勧持品第13 耶輸陀羅尼らへの成仏の予言と菩薩の獅子吼

IMG_NEW_0003_convert_20140831110213.jpg
ヤショダラ(手塚治虫『ブッダ』)

 その時、羅睺羅 らごら(ラーフラ)の母で、女性出家者の耶輸陀羅 やしゅだら(ヤショーダラー)の心に次の思いが生じた。

 
世尊は、予言において私の名前を言われなかった」

 すると、世尊は、女性出家者である耶輸陀羅の心の思いを心で知って、耶輸陀羅に次のようにおっしゃられた。

 「耶輸陀羅よ、私は、あなたに告げよう。あなたに通告しよう。あなたもまた、1万・コーティ・ナユタもの数え切れないほど多くのブッダたちのそばにおいて、称賛、尊重、尊敬、供養、恭敬、尊崇をなして後に、説法者としての菩薩となるであろう。

 そして、あなたは、世間において順次に菩薩としての修行を完成して、善国 ぜんこく(祝福された国土)という世界において、具足千万光相 ぐそくせんまんこうそう(幾百・千の光明で満たされた旗を持つもの)という名前の正しく完全に覚ったブッダでとなるであろう。

 また、世尊であり、具足千万光相という正しく完全に覚った尊敬されるべきブッダの寿命の長さは、量り知ることができないであろう」

 すると、6000人の女性出家者たちに伴われた
摩訶波闍波提憍曇弥と、4000人の女性出家者たちの伴われた耶輸陀羅は、世尊のそばで、この上ない正しく完全な覚りに到るであろうという自分に対する予言を聞いて、希有なる思いを抱き、驚くべき思いに満たされ、その時、次の詩を述べた。

 「世尊よ、あなたは教育者であり、指導者であり、神々に伴われた世間の人々の師で
 あり、衆生に蘇生をもたらす人であり、人間と神々から供養される人であります。保
 護者よ、私たちもまた今、満足させられました。

 その時、それらの女性出家者たちは、この詩を述べた後、世尊に次のように申し上げた。

 「世尊よ、私たちもまた、〔恐るべき〕後の時代、後の状況において、この法門を説き明かすことに耐えることにしましょう。ただし、このサハー(娑婆)世界以外の世界においてであります」と。

ダウンロード (8)

 すると、世尊は陀羅尼(ダーラニー)を得ていて、不退転で、真理の車輪を転ずる菩薩たちのうちのそれらの800万・コーティ・ナユタもの多くの菩薩たちのいるところを注視された。その時、それらの偉大な人である菩薩たちは、世尊によって注視されると直ちに席から立ち上がって、世尊のおられるところに向かって合掌して敬礼し、次のように考えた。

 「世尊は、私たちにこの法門を説き示すことを求めておられるのだ」と。

 しかも、それらの800万・コーティ・ナユタもの多くの菩薩たちは、このように考えて、動揺し、お互いに語り合った。

 「良家の息子たちよ、世尊は、私たちに未来の世においてこの法門を説き示すことを求めておられるのが、私たちはどうしたらいいのであろうか?

 すると、それらの良家の息子たちは、世尊に対する尊敬の念によって、また自分の過去のおいてなした修行と誓願によって、世尊の面前で獅子吼 ししくをなした。

 「世尊よ、ブッダが完全なる滅度に入られた後で、私たちは、未来の世において十方に赴いて、まさに世尊の威神力によってあらゆる衆生にこの法門を書写させ、読誦 どくじゅさせ、考えさせ、説き示させるでありましょう。だから、世尊は、私たちと異なる世界にいらっしゃっても、私たちのために守護と、擁護と、防護をなしてください」(つづく)

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【 2022/12/16 06:53 】

第12章 果敢なる努力(勧持品第13)  | コメント(0)  | トラックバック(0)  |

法華経勧持品第13 弘教の申し出と憍曇弥らへの未来成仏の予言

第12章 果敢なる努力(勧持品 かんじほん第13)
 
IMG_NEW_0002.jpg


訶波闍波提 まかはじゃはだい(手塚治虫『ブッダ』)

 その時、200万人の菩薩を侍者とする薬王 やくおう(薬の王)という偉大な人である菩薩と、大楽説 だいぎょうせつ(大いなる弁才を持つもの)という偉大な人である菩薩は、世尊の面前で次の言葉を申し上げた。

 「世尊は、この滅後の弘教について心配しないでください。世尊よ、ブッダが完全なる滅度に入られた後に、私たちは、この法門を衆生に説き示し、説き明かすでありましょう。

 世尊よ、その〔恐るべき後の〕時代において衆生は悪意があり、善い果報をもたらす立派な行ない(善根)が乏しく、傲慢ごうまんで、利得を得ることと、称賛されることに執着していて、善くない果報をもたらす行為(不善根)をなし、制御し難く、信順の志を捨て去っていて、信順の意向が強くないでありましょう。けれども、世尊よ、私たちは忍耐の力を現わして、その時代においてこの経を解説し、受持し、説き示し、書写し、尊重し、恭敬し、讃嘆し、供養するでありましょう。そして、世尊よ、私たちは、私たちの身体と生命を投げうって、この経を説き明かすでありましょう。だから、世尊は、滅後の弘教について心配しないでください」と。

 
すると、その集会の中のまだ学ぶべきことのある有学うがくと、もはや学ぶべきぶことのない無学むがく/rt>の男性出家者たちのうち、500人の男性出家者たちが、世尊に次のように申し上げた。

 「世尊よ、私たちもまたこの法門を説き明かすことに耐えることにしましょう。ただし、世尊よ、このサハー(娑婆しゃば)世界以外の世界においてであります。

 すると、世尊によってこの上ない正しく完全な覚りに到るであろうという予言をされた世尊の弟子たちで、まだ学ぶべきことのあるものと、もはや学ぶべきことのないものからなるそれらの8000人もの多くの男性出家者たちはすべて、世尊のおられるところに向かって合掌して敬礼し、世尊に次のように申し上げた。

 「世尊は、滅後の弘教について心配しないでください。ブッダが完全なる滅度に入られた後で、〔恐るべき〕後の時代、後の状況において、私たちもまた、この法門を説き明かすでありましょう。ただし、このサハー世界以外の世界においてであります。それは、どんな理由によってでしょうか?世尊よ、このサハー世界にいる衆生は、傲慢で、善い果報をもたらす立派な行ないが乏しく、常に意地が悪く、悪意があり、生まれつき心がゆがんでいるからです」
 
ダウンロード (7)

 するとその時、世尊の叔母である摩訶波闍波提 まかはじゃはだい憍曇弥 きょうどんみ(マハー・プラジャーパティー・ゴータミー)は、まだ学ぶべきことのあるものと、もはや学ぶべきことのない女性出家者たちである6000人の女性出家者たちとともに席から立ち上がって、世尊のおられるところに向かって合掌して敬礼し、世尊を見つめながら立っていた。
 
 そこで世尊は、その時、
摩訶波闍波提比丘尼に語りかけられた。
 
 「憍曇弥 きょうどんみ(ゴータミー)よ、なぜ、あなたは憂いを抱いて立ってブッダの私を見つめているのか?」

 「私は、名前を呼ばれて、この上ない正しく完全な覚りに到るであろうという予言がなされませんでした」
 
 「しかしながら
憍曇弥よ、すべての聴衆に対する未来の成仏の予言によって、あなたは、既に予言がなされているのだ。従って、憍曇弥よ、あなたは、この私の外に380万・コーティ・ナユタもの数え切れないほど多くのブッダたちのそばにおいて、〔称讃、尊重、尊敬、供養、恭敬、尊崇をなして後に〕説法者としての菩薩となるであろう。

 まだ学ぶべきことのあるものと、もはや学ぶべきことのない女性出家者たちのうちの、これらの6000人の女性出家者たちもまた、まさにあなたとともに、それらの正しく完全に覚った尊敬されるべきブッダたちのそばにおいて、説法者としての菩薩となるであろう。

 それからさらに後に、あなたは世間において、菩薩としての修行を成し遂げて、一切衆生喜見(あらゆる衆生が喜んで見るもの)という名前のブッダとなるであろう。
 
 また、
憍曇弥よ、その一切衆生喜見という正しく完全に覚った尊敬されるべきブッダは、それらの6000人の菩薩たちに対して、次々に連続して、この上ない正しく完全な覚りに到るであろうという予言をなすであろう。(つづく)

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【 2022/12/10 05:32 】

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法華経提婆達多品第12  8歳の龍女の正しく完全な覚り

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 文殊師利菩薩が言った。
 
 「良家の息子よ、
娑羯羅 しゃから龍王の娘(龍女 りゅうにょ)がいるのだ。その娘は生まれて8年で、大いなる智慧を具え、研ぎ澄まされた能力を持ち、智に基づいた身体と言葉と心の行ない(身口意 しんくい三業 さんごう)を具えており、あらゆるブッダが説かれた象徴的表現の意味を会得していて、ダーラニー(陀羅尼 だらに・暗記されるべき呪文)を得ており、あらゆる事物や衆生に対して精神集中する幾千もの三昧 さんまいを一瞬にして獲得しているのだ。


 羯羅龍王の娘は、覚りを求める心において不退転であり、広大なる誓願を持ち、一切衆生に対して自分のことのように愛情を抱いており、さらに徳性を生み出すことが出来る。それらを欠いていることはないのだ。羯羅龍王の娘は、顔に微笑 ほほえみを浮かべ、青蓮華のように最高の美しい容色を具え、慈愛に満ちた心を持ち、慈しみの言葉を語るのだ。その羯羅龍王の娘は、正しく完全な覚りを得ることができるのだ。

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 智積菩薩が言った。

 「私が世尊である釈迦牟尼如来を見るに、釈迦牟尼如来は、幾千という多くの劫にわたって菩薩であり、覚りを求める意志が熱心で、多くの善行をなし、また、いかなる時にも決して努力精進を緩められるようなことはありませんでした。三千大千世界において、この釈迦牟尼如来が衆生の幸福のために身を投じなかった場所は、地上には芥子 けしの実ほどの広さでさえも決して存在しません。釈迦牟尼如来は、このような努力精進をしてその後に、覚りを得られたのです。

 それに比べて、この
羯羅龍王の娘が、一瞬のうちにこの上ない正しく完全な覚りを得ることができるということを、いったい誰が信ずるでしょうか?」

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 するとその時、
羯羅龍王の娘が前方に立ったのが見られた。その羯羅龍王の娘は、世尊の両足を頭におしいただくことによって恭しく挨拶してから、一隅に立った。その時、羯羅龍王の娘は次の詩を述べた。

 「ブッダは、深遠で非常に福徳豊かに諸々の方角に遍く輝き、その鋭敏な身体は32種
 類の勝れた身体的特徴によって見事に飾られています。

 その身体は、80種類の副次的な身体的特徴を具えていて、一切衆生に尊敬され、あた
 かも町の中の市場のように、あらゆる人々が近づくべきものです。
 
 私にとって完全な覚りは思うがままであり、その際、私の証人はブッダであります。
 私は、衆生を苦しみから解き放つ広大な法を説きましょう。(つづく)

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【 2022/12/09 05:25 】

第11章 ストゥーパの出現=続き(提婆達多品第12)  | コメント(0)  | トラックバック(0)  |

法華経提婆達多品第12  龍宮から戻って来た文殊師利菩薩

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 さてその時、智積 ちしゃく(智慧の集積を持つもの)という名前の菩薩が、下方にある多宝如来の国土から来ていた。その菩薩は、多宝如来に次のように申し上げた。

 「世尊よ、私たちは私たちのブッダの国土にかえりましょう」

 すると世尊である釈迦牟尼如来は、智積菩薩に次のようにおっしゃられた。

 「良家の息子よ、私の菩薩である文殊師利 もんじゅしり(マンジュシリー)法王子とともに何か法についての議論をなして、その後、あなたのブッダの国土に帰ることにして、それまでしばらく待つがよい」

 するとその時、文殊師利法王子が、車の輪ほどの大きさの1000枚の花弁を持つ紅蓮華の中に坐って、大勢の菩薩に囲まれ、敬われて、大海の真ん中の;娑竭羅 しゃから (サーカラ)龍王の宮殿から上方の空中に上昇し、虚空の経路を通って、霊鷲山 りょうじゅせんにおられる世尊のところに近づいた。

 そして文殊師利法王子は、紅蓮華から下りて、釈迦牟尼世尊多宝如来ののそれぞれの両足を頭におしいただいくことによってうやうやしく挨拶し、智積菩薩と向かい合って、親交と喜びの種々の言葉を交わして、一隅に坐った。 
 
 
すると、智積菩薩は、文殊師利法王子に次のように尋ねた。
 
 「文殊師利よ、大海の真ん中に行かれていたあなたは、どれほど多くの衆生を教化 きょうけされたのでしょうか?」
 
 文殊師利が答えた。

 「私は無量の数え切れない多くの衆生を教化した。それらの衆生は、言葉によって知らせることも、心によって考えることもできないほど、それほど無量で、数え切れないのである。良家の息子よ、その瑞相を見るまで、あなたはしばらく待つがよい」

 
文殊師利法王子が、この言葉を言うと直ちに、何千もの多くの紅蓮華が、大海の真ん中から上方の空中へと上昇した。それらの紅蓮華には何千もの多くの菩薩が一緒に坐っていた。そこで、それらの菩薩たちは、まさにその虚空の経路を通って、霊鷲山のあるところへ近づいた。近づいてから、その上空の空中に留まったのが見られた。

 それらの菩薩たちは、文殊師利法王子によって、この上ない正しく完全な覚りへ向けて教化されたのである。

 かつて、大いなる乗り物によって出で立った菩薩たちは、そこで、大いなる乗り物の諸々の功徳と、6種類の完成を称讃した。かつて、声聞であった菩薩たちは、まさに声聞のための乗り物を称讃した。

 しかも、それらの菩薩たちのすべては、あらゆるものごとがくうであるということについても、大いなる乗り物の諸々の功徳についても同じ意見を持っていた。
 
ダウンロード (4)
 
 そこで、文殊師利法王子智積菩薩に次のように言った。

 「良家の息子よ、衆生に対するこの教化はすべて、私が大海の真ん中に行ってなしたのです。その教化の結果が、ここに現われているのです」

 そこで、智積菩薩は、詩によって讃嘆して歌いながら、文殊師利法王子に質問した。

 「大いに祝福された人よ、智慧によって勇者という名前を持つ人よ、数えることので
 きないそれらの衆生を、今、あなたは化導 けどうされました。この威光は、何によるもので
 しょうか?それをお話しください人間の神よ、私は、あなたにこのことを尋ねます。

 それらの人たちが聞いた後に、覚りへ向けて心を生じ、確実に一切智へと渡りうる浅
 瀬を獲得したのは、覚りへの道を教示するどのような法、あるいはどのような経を、
 あなたは説かれたのでしょうか?」

 文殊師利菩薩が言った。

 「大海の真ん中において、私は「白蓮華のように最も勝れた正しい教え」という経を説いたのであり、他の経典を説いたのではありません」

 智積菩薩
が言った。

 「この経は、深遠で、微妙で、見難いものであり、この経に匹敵する他の経典は決して何もありません。諸経の中の宝であるこの経を理解し、この上ない正しく完全な覚りに十分に目覚めることを快く受け容れられる衆生が、誰かいるのでしょうか?」(つづく)

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【 2022/12/06 05:20 】

第11章 ストゥーパの出現=続き(提婆達多品第12)  | コメント(0)  | トラックバック(0)  |

法華経提婆達多品第12 提婆達多への未来成仏の予言

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ダイバダッタ(手塚治虫『ブッダ』)

 さらに、男性出家者たちよ、その時その情況で、おそらく誰か別の人が、その仙人であったのであろうと見なすであろうか?しかしながら、決してそのように見なすべきではない。この男性出家者である提婆達多 だいばだった(デーヴァダッタ)こそが、その時その情況でその仙人であったからである。男性出家者たちよ、提婆達多こそが私の善き友(善知識 ぜんちしき)なのだ。
 
 まさに提婆達多のおかげで、私は6種類の完成(六波羅蜜 ろくはらみつ)や、偉大なる慈しみ()、偉大なる憐み()、偉大なる喜び()、偏見・差別を捨てて衆生を利する偉大なる平等性(しゃ)〔からなる四梵住 しぼんじゅう〕も、偉大なる人がそなえる32種類の身体的特徴(三十二相 さんじゅうにそう)、80種類の副次的な身体的特徴(八十種好 はちじっしゅごう)、金色の皮膚を持つこと、ブッダに具わる10種の力(十力 じゅうりき)、説法における4つの畏れなきこと(四無畏 しむい)、人々を包容して救うための4つの事柄(四摂事 ししょうじ)、ブッダに具わる18種類の特別の性質(十八不具仏法 じゅうはちふぐうぶっぽう)、大いなる神通の力を持つこと、十方の衆生を救うこととーそれらを完全に成し遂げたのである。そのすべては、提婆達多のおかげなのである。

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 男性出家者たちよ、私はあなたたちに告げ、分からせてやろう。この男性出家者である提婆達多は、未来の世において、量ることもできない劫を経て、天道(天への階段)という世界において、天王(神々の王)という名前の正しく完全に覚ったブッダでとなるであろう。

 しかもなお、男性出家者たちよ、天王というブッダの寿命の長さは、20中劫にわたり、そのブッダは詳細に法を説くであろう。そして、ガンジス河の砂の数に等しい多くの衆生は、あらゆる煩悩を断って、阿羅漢の位を覚証するであろう。また、多くの衆生は、各自の覚りである独覚果 どっかくかに向けて心をおこすであろう。また、ガンジス河の砂の数に等しい多くの衆生は、この上なく正しく完全な覚りに向けて心を発し、不退転の忍耐を得るであろう。

 しかもなお、男性出家者たちよ、天王というブッダが完全なる滅度に入った後で、その正しい教えは20中劫にわたって存続するであろう。その遺身は、構成要素の部分ごとに分けられることはなく、このブッダの一揃 ひとそろいの全体をなす遺身は七宝で造られたストゥーパに納められるであろう。そのストゥーパは、高さが60ヨージャナ(約900㎞)で、幅が40ヨージャナ(約600㎞)であろう。

 そのストゥーパに対して、すべての神々や人間たちは、花や、末香、薫香、花環、塗香。焼香、衣、日傘、旗、幟によって供養を行ない、詩や歌によって称賛するであろう。

 そのストゥーパに体の右側を向けて右回りにめぐって、敬礼する人たちのうちのある人たちは、〔小乗仏教で〕最高の結果であると説く阿羅漢の位を覚証するであろうし、ある人たちは独覚の覚りに達するであろう。考えることもできない無量の神々や人間たちは、この上ない正しく完全な覚りへ向けて心を発し、退くことはないであろう」

ダウンロード (1)

 しかもまた、世尊は、さらに男性出家者たちの集団に次のように語りかけられた。

 「男性出家者たちよ、未来の世において、良家の息子であれ、良家の娘であれ、「白蓮華のように最も勝れた正しい教え」という経典の中のこの『ストゥーパの出現の章』を聞き、聞いて後に惑わず、疑わず、清らかな心を持ち、信順する人は誰であっても、その人は3つの悪しき境遇(三悪趣 さんなくしゅ)への門を閉ざすであろう。その人は、地獄や、畜生界、ヤマの世界(餓鬼界)へ生まれ堕ちることはないであろう。

 また、十方にあるブッダの国土に生まれ、それぞれの誕生のたびごとにまさにこの「白蓮華のように最も勝れた正しい教え」という経を聞くであろう。またこの人が、神々や人間の世界に生まれて後、この人には卓越した地位の獲得があるであろう。その人が生まれるブッダの国土がどこであれ、そこにおいて、その人はブッダの面前で、原因なく自然発生(化生 けしょう)した七宝造りの紅蓮華の中に生まれるであろう」(つづく)

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【 2022/12/02 04:53 】

第11章 ストゥーパの出現=続き(提婆達多品第12)  | コメント(0)  | トラックバック(0)  |
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