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なまぐさ坊主の聖地巡礼

プロフィール

ホンジュン

Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
 毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴りながら、仏教や歴史について語ります。

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ブッダの弟子たち その11


ブッダを知りませんか?

チューラパンタカ(周利槃特【しゅりはんどく】) 
 
   
 ブッダの十大弟子を書き終えて、その他の弟子のトップバッターとして誰を書こうかなと思った時、真っ先に名前が浮かんだのがチューラパンタカ。なぜなら、ブッダの弟子の中でもっとも愚かで頭の悪い人だった言われており、僕のような生ぐさ坊主にとってはもの凄く親近感がわく人物だからね。

レレレ

 この変なおじさん誰だか知ってる?今の若い人は知らないかもね。一世を風靡した赤塚不二夫の『天才バカボン』に出てくる「レレレのおじさん」だ。いつも箒【ほうき】をもって掃除をしていて、「おでかけですか~?レレレのレ~」が口癖なんで、「レレレのおじさん」と名づけられた。実はこのおじさんのモデルになったのが、チューラパンタカだとされている。ちなみに、バカボンも「馬鹿なボンボン」という意味じゃなくて、ブッダの敬称だよ。サンスクリット語でBhagavat(ヴァガヴァット)、「世の中で最も尊い」という意味だ。これを鳩摩羅什は「世尊」と意訳し、玄奘は「婆伽梵【ばかぼん】」と音訳した。バカボンのパパの口癖である「これでいいのだ~」も、実は悟りの境地を表してるんだって。赤塚不二夫恐るべし~。

 チューラパンタカはラージャガハの大富豪の娘と召使いとの間に生まれた。二人は駆け落ちしたが、やがてみごもった彼女は実家に帰って出産したいと旦那に相談した。旦那は同意したんだけど、罰を恐れて腰を上げようとしなかった。そりゃそうだよね。彼女のカースト(正式にはヴァルナ)はヴァイシャだけど、旦那はシュードラだからね。カースト制度ではカーストの異なる者同士の結婚は基本的に許されていない。男性が上位で女性が下位のカーストである場合は認められることもあったが、その逆は絶対に認められなかった。旦那は彼女の父親に殺されて文句言えない立場なんだ。そんなわけで、臨月が近づいた彼女は一人でラージャガハに帰ろうとしたんだけど、その途中の道端で男の子を産んだ。道路で生まれたんで、この男の子はパンタカ(道路の意味)と名づけられた。次男坊も同じように実家に帰る途中の道端で生まれたんで、長男をマハーパンタカ(大道路)と改名し、次男坊をチューラパンタカ(小道路)と名づけたそうだ。

 兄ちゃんのマハーパンタカは非常に賢かったんだけど、弟のチューラパンタカは生まれつき愚鈍だった。先に出家した兄ちゃんの勧めでチューラパンタカも出家したが、
「かぐわしい香りの真紅の蓮華が 暁に鼻開いて香るように あまねく照らすブッダを身よ。空に輝く太陽のようにー」
 という一句を4カ月かかっても暗記することができなかった。そのために坊さん仲間からことあるごとに「お前は馬鹿だ、愚か者め」と罵られていた。これだけ記憶力が悪いというのは、ひょっとしたら障害をもっていたのかも知れないね。

 何とかして弟を一人前の修行僧にしてやろうとした兄ちゃんも終に堪忍袋の緒が切れて、「お前はアホか。こんなに学習が進まないんだったら、もう仏道は無理だから、さっさとここを出て家に帰ってしまえ!」
 チューラパンタカは兄ちゃんに怒られたことが辛くて、祇園精舎の門外に出て、涙を流して立ちつくしていた。そこへちょうどブッダが通りかかり、やさしく頭を撫でながら、泣いているわけを尋ねた。
 
「汝はなぜここで悲しんで泣いているのか?」
「私はいま兄から、お前は仏道を修めようとしても何も覚えられないのだから、ここにいる必要はない。すぐに家に帰れと言われ、悲しくて泣いています。
 と訴えたので、ブッダは哀れに思って、こう教えた。
「お前は自分の愚かさを悲しむことはないんだよ。私が望んでいる悟りの道は、お前の兄の言うようなことではないんだから」
 ブッダはチューラパンタカの手をとって一緒に自室に戻り、坐らせて教えを説き始めた。その時ブッダは彼に1本の箒を持たせてこう言った。
「《この箒もて塵【ちり】を払わん、垢【あか】をのぞかん》。お前はこの言葉を何度でも繰り返しなさい」

 愚鈍な
チューラパンタカでもこの短い句は覚えられたんだね。以来、彼はいつでも箒をもってこの言葉を繰り返し続けた。賢そうな弟子達は薄笑いを浮かべながら、彼の行動を見ていた。しかし、チューラパンタカは愚鈍なるがゆえに何の疑問も覚えず、毎日毎日、同じ言葉を繰り返していた。

 ところが、ある日、彼は突然こう思った。
「ブッダの言われた塵とは心の塵のこと、垢とは心の垢のことではないか。人はそれぞれ心に汚れがある。そのわが心の塵を払い、わが心の垢を除くこと、これが仏道の修行なのではないか。人の世の迷いは垢なり。智慧はこれ心の箒なり。われ、いま智慧の箒もて、愚かなるわが迷いを払うべし」

 彼はすぐにブッダのもとに駆けつけてこう言った。
「ブッダよ、私は智慧の箒でもって、わが心の塵を払います」
 ブッダはにっこり微笑みながら、こう言った。
「善きかなわが弟子よ。お前の言う通りだよ。智慧はよく人の世の迷いを除く。わが弟子に修めて欲しいのはまさにこのことなのだ」
 チューラパンタカは愚かなるがゆえに、ついに悟りを得た。

「愚かなるものも おのれ愚かなりと思うは 彼これによりてまた賢きなり おのれ賢しと思うは 彼こそまこと愚かといわるべし」

 何が愚かで、何が賢いか、ブッダはわれわれに問いかけている。チューラパンタカは自分が愚かであると思い、ブッダを信じ、何の疑いもなく言われたままに、箒を持ち、ただひたすらに文句を唱えた。その一途な行動がついに悟りを開かせたのだが、チューラパンタカは本当に愚かだったのだろうか?
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 ちなみに、茗荷を食べると物忘れがひどくなる、って言われてるよね。でも、これはウソ。チューラパンタカが自分の名前も忘れてしまうほどだったんで、首から名荷をかけさせた。名荷って、名前を書いた札、つまり名札のこと。ところが彼は名荷をかけたことさえも忘れてしまった。こうなったらもう認知症だけど、名荷と茗荷の音がいっしょなんで、茗荷を食べると物忘れがひどくなるということになっちゃったらしい。

 なお、茗荷と生姜は同じ頃に中国から入って来たそうだけど、香りの強いほうを「兄香【せのか】」、弱いほうを「妹香【めのか】」と呼んだのが語源とされている。知ってた?(つづく)

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テーマ:歴史 - ジャンル:学問・文化・芸術

【 2014/08/10 17:05 】

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