なまぐさ坊主の聖地巡礼
プロフィール
Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴りながら、仏教や歴史について語ります。
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ウッパラヴァンナー(蓮華色比丘尼【れんげしきびくに】) その1
この写真がウッパラヴァンナー?もちろん、そんなはずはありません。こんな美しい人だったんだろうな~、という僕の願望です。ウッパラヴァンナーは西インドのアヴァンティ国ウッジェーニーの生まれで、幼い頃から大変美しく、その肌の色は青蓮華【しょうれんげ】の萼【がく】の色のようだったので、ウッパラ(青蓮華)ヴァンナーと呼ばれた。ヴァンナーは世界史でならったヴァルナ制のヴァルナと同じ言葉で、色という意味だ。
これが青蓮華の花。花の形を見てわかると思うけど、蓮華とは言ってるけど、正しくは青睡蓮のこと。漢訳仏典で蓮華と訳されているものには、実は4種類ある。パドマ=紅蓮華、ウトパラ=青睡蓮、クムダ=白睡蓮、プンダリーカ=白蓮華の4つ。
この写真は世界史で習ったよね。そう、グプタ様式を代表するアジャンター石窟寺院の壁画で、法隆寺金堂壁画にも影響を与えた、って習ったと思う。右手に持っている花をよく見てごらん。青蓮華の花だよね。そこから蓮華手菩薩と呼ばれている。
蓮華は仏教にとってシンボル的な花だけど、特に僕たち日蓮宗にとってはとても大事な花だ。なぜなら、僕たちが信奉しているのは『妙法蓮華経』だからね。サンスクリット語での題名はサダルマ・プンダリーカ・スートラ。これを鳩摩羅什が妙法蓮華経と訳した。岩本裕先生は「正しい教えの白蓮」と訳されたけど、『仏教、本当の教え』を書かれた植木雅俊先生は「白蓮華のように最も勝れた正しい教え」と訳された。植木先生の訳のほうがしっくり来るよね。本文に出てくる蓮華はみんな白蓮華だと思っていたら、先生によると白蓮華は1回しか出て来ないんだって。おまけに、有名な「不染世間法 如蓮華在水」(世間の法に染まらざること、蓮華の水に在るが如し)の蓮華はパドマ(紅蓮華)だそうで、先生の本を読んで目から鱗が落ちちゃった。
あれあれ、話が随分逸れちゃった。元に戻すね。ウッパラヴァンナーは成長して婿を迎え、一人の女の子をもうけた。その娘が8歳になった頃、旦那さんが病気で亡くなり、ウッパラヴァンナーは使用人からとんでもないことを聞かされる。ウッパラヴァンナーのお父さんは早くに亡くなり、お母さんは未亡人となっていた。そのお母さんが淋しさに耐えかねて、婿さん、つまりウッパラヴァンナーの旦那と通じ合っていたというんだ。母と夫の不倫関係を知って怒り悲しんだウッパラヴァンナーは、娘を部屋に残したまま家を飛び出してしまった。
まもなく彼女はヴァーラナシー城にたどり着いた。城門の外に茫然自失の状態で立ちつくしていた時、城内に住む妻を失ったばかりの一人の長者がその余りの美しさに目を留め、彼女に話しかけた。
「そなたは誰の妻か?」
「私は誰の妻でもありません」
「もし独り身なら、私の妻になってくれないか」
彼女は承諾して、長者の妻となった。それから8年、彼女は夫によく尽くして、夫は事業に成功して大金持ちになった。
そのまま幸せな日々が続くかと思ったある日、夫は商用でウッジェーニーに出かけた。そこで一人の少女に出会うのだが、偶然にもその少女はかつてウッパラヴァンナーが産んだ娘だった。もちろん長者はそのことを知らない。母親の血を引いてその少女もひときわ容姿が優れていたので、長者は心が動いてしまう。すぐにその少女の養父と交渉し、値千金でその少女を貰い受けた。こらっ、助平爺。ウッパラヴァンナーという絶世の美女を嫁さんにしていながら、まだ他の女に手を出すんか。
長者はウッジェーニーにその少女を連れて帰り、自宅からあまり遠くない所に彼女をかくまい、儲けた金の半分を彼女のところに置いて、知らぬ顔で家に帰った。しかし、ウッパラヴァンナーは長者から渡された儲けが少ないのを不審に思い、長者を問いただした。長者は「途中で賊に襲われたんだ。今から取り返しに行ってくる」と言い残すと、また家を出て行った。長者が出かけた後に友人が来て、「彼は賊のところに行ったんじゃないよ」と、これまでのいきさつを告げ口しちゃった。
少々のことでは動揺しない強い女になっていたウッパラヴァンナーは帰宅した長者に、
「その娘さんをここへ連れてらっしゃい。私が面倒を見てあげるわ」
と言った。浮気がばれて冷や汗ものだった長者は、若い女を嫁さん公認で囲えるとあって、喜び勇んで少女を自宅に連れてきた。子供のいなかったウッパラヴァンナーは旦那の妾にもかかわらず、実の娘のように慈愛をこめてその少女の面倒を見た。
ある時、少女の髪をとかしてやりながら、ウッパラヴァンナーは少女の素性を何気なく聞いた。
「あなたのお母さんの名前は?」
「母の名はウッパラヴァンナーといいます。幼い時、私を置いて出て行ってしまいました」
ウッパラヴァンナーは昔捨ててきた我が娘だと知って仰天し、暗澹たる思いに陥った。
〝ああ、昔、母とわが夫を共有していたというのに、今また、娘とわが夫を共有するとは、なんという忌まわしい悪の巡り合わせか〟
ウッパラヴァンナーは家を飛び出し、心乱れるままに街中を彷徨【さまよ】い歩いた。夢遊病者のように歩き、ラージャガハにやって来たウッパラヴァンナーは男たちの誘いのまま、金を取って身を売る売春婦となってしまう。もう自暴自棄だね。
そんな時、一人の少年がやって来て、
「お前は出家者の心を動かすことが出来るか?」と面白半分に聞いた。
「私はこれまで多くの男たちの心を乱してきた。出家者だからといって、私のこの魅力に心惑わされずにいられましょうか」
少年は彼女をブッダの弟子モッガラーナのところへ連れて行った。彼女は美しい肢体で誘惑しようとするが、モッガラーナの心は岩のようにびくともしない。
そして、モッガラーナは彼女を諭した。
「汝、自らを深く省みよ。汝の身は厭【いと】うべきかな。穢れはとこしえに身体にあふれている。汝の身の不浄を人に語れば、あたかも夏の日の便所のように、その穢れた臭いに人はお前を捨てて遠くに去って行くだろう」
その言葉に打ち砕かれたウッパラヴァンナーはモッガラーナに身の上をすべてを打ち明け、
「お願いですから、その教えをさらに深く説いてください。私は教えに従って出家し、心を改めて道を求めたい」と、出家を願い出た。
モッガラーナは彼女を哀れんでブッダの教えを説いて聞かせ、ブッダのもとに連れて行った。
このいきさつを聞いたブッダは快くウッパラヴァンナーの出家を許した。
なんだか、この前亡くなった渡辺淳一の愛欲小説みたいなお話だね。実はウッパラヴァンナーについては違うお話も伝わっているんだけど、長くなるので次回お話するね。(つづく)
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蓮華は仏教にとってシンボル的な花だけど、特に僕たち日蓮宗にとってはとても大事な花だ。なぜなら、僕たちが信奉しているのは『妙法蓮華経』だからね。サンスクリット語での題名はサダルマ・プンダリーカ・スートラ。これを鳩摩羅什が妙法蓮華経と訳した。岩本裕先生は「正しい教えの白蓮」と訳されたけど、『仏教、本当の教え』を書かれた植木雅俊先生は「白蓮華のように最も勝れた正しい教え」と訳された。植木先生の訳のほうがしっくり来るよね。本文に出てくる蓮華はみんな白蓮華だと思っていたら、先生によると白蓮華は1回しか出て来ないんだって。おまけに、有名な「不染世間法 如蓮華在水」(世間の法に染まらざること、蓮華の水に在るが如し)の蓮華はパドマ(紅蓮華)だそうで、先生の本を読んで目から鱗が落ちちゃった。
あれあれ、話が随分逸れちゃった。元に戻すね。ウッパラヴァンナーは成長して婿を迎え、一人の女の子をもうけた。その娘が8歳になった頃、旦那さんが病気で亡くなり、ウッパラヴァンナーは使用人からとんでもないことを聞かされる。ウッパラヴァンナーのお父さんは早くに亡くなり、お母さんは未亡人となっていた。そのお母さんが淋しさに耐えかねて、婿さん、つまりウッパラヴァンナーの旦那と通じ合っていたというんだ。母と夫の不倫関係を知って怒り悲しんだウッパラヴァンナーは、娘を部屋に残したまま家を飛び出してしまった。
まもなく彼女はヴァーラナシー城にたどり着いた。城門の外に茫然自失の状態で立ちつくしていた時、城内に住む妻を失ったばかりの一人の長者がその余りの美しさに目を留め、彼女に話しかけた。
「そなたは誰の妻か?」
「私は誰の妻でもありません」
「もし独り身なら、私の妻になってくれないか」
彼女は承諾して、長者の妻となった。それから8年、彼女は夫によく尽くして、夫は事業に成功して大金持ちになった。
そのまま幸せな日々が続くかと思ったある日、夫は商用でウッジェーニーに出かけた。そこで一人の少女に出会うのだが、偶然にもその少女はかつてウッパラヴァンナーが産んだ娘だった。もちろん長者はそのことを知らない。母親の血を引いてその少女もひときわ容姿が優れていたので、長者は心が動いてしまう。すぐにその少女の養父と交渉し、値千金でその少女を貰い受けた。こらっ、助平爺。ウッパラヴァンナーという絶世の美女を嫁さんにしていながら、まだ他の女に手を出すんか。

長者はウッジェーニーにその少女を連れて帰り、自宅からあまり遠くない所に彼女をかくまい、儲けた金の半分を彼女のところに置いて、知らぬ顔で家に帰った。しかし、ウッパラヴァンナーは長者から渡された儲けが少ないのを不審に思い、長者を問いただした。長者は「途中で賊に襲われたんだ。今から取り返しに行ってくる」と言い残すと、また家を出て行った。長者が出かけた後に友人が来て、「彼は賊のところに行ったんじゃないよ」と、これまでのいきさつを告げ口しちゃった。
少々のことでは動揺しない強い女になっていたウッパラヴァンナーは帰宅した長者に、
「その娘さんをここへ連れてらっしゃい。私が面倒を見てあげるわ」
と言った。浮気がばれて冷や汗ものだった長者は、若い女を嫁さん公認で囲えるとあって、喜び勇んで少女を自宅に連れてきた。子供のいなかったウッパラヴァンナーは旦那の妾にもかかわらず、実の娘のように慈愛をこめてその少女の面倒を見た。
ある時、少女の髪をとかしてやりながら、ウッパラヴァンナーは少女の素性を何気なく聞いた。
「あなたのお母さんの名前は?」
「母の名はウッパラヴァンナーといいます。幼い時、私を置いて出て行ってしまいました」
ウッパラヴァンナーは昔捨ててきた我が娘だと知って仰天し、暗澹たる思いに陥った。
〝ああ、昔、母とわが夫を共有していたというのに、今また、娘とわが夫を共有するとは、なんという忌まわしい悪の巡り合わせか〟
ウッパラヴァンナーは家を飛び出し、心乱れるままに街中を彷徨【さまよ】い歩いた。夢遊病者のように歩き、ラージャガハにやって来たウッパラヴァンナーは男たちの誘いのまま、金を取って身を売る売春婦となってしまう。もう自暴自棄だね。
そんな時、一人の少年がやって来て、
「お前は出家者の心を動かすことが出来るか?」と面白半分に聞いた。
「私はこれまで多くの男たちの心を乱してきた。出家者だからといって、私のこの魅力に心惑わされずにいられましょうか」
少年は彼女をブッダの弟子モッガラーナのところへ連れて行った。彼女は美しい肢体で誘惑しようとするが、モッガラーナの心は岩のようにびくともしない。
そして、モッガラーナは彼女を諭した。
「汝、自らを深く省みよ。汝の身は厭【いと】うべきかな。穢れはとこしえに身体にあふれている。汝の身の不浄を人に語れば、あたかも夏の日の便所のように、その穢れた臭いに人はお前を捨てて遠くに去って行くだろう」
その言葉に打ち砕かれたウッパラヴァンナーはモッガラーナに身の上をすべてを打ち明け、
「お願いですから、その教えをさらに深く説いてください。私は教えに従って出家し、心を改めて道を求めたい」と、出家を願い出た。
モッガラーナは彼女を哀れんでブッダの教えを説いて聞かせ、ブッダのもとに連れて行った。
このいきさつを聞いたブッダは快くウッパラヴァンナーの出家を許した。
なんだか、この前亡くなった渡辺淳一の愛欲小説みたいなお話だね。実はウッパラヴァンナーについては違うお話も伝わっているんだけど、長くなるので次回お話するね。(つづく)
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