なまぐさ坊主の聖地巡礼
プロフィール
Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴りながら、仏教や歴史について語ります。
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アジャータサットゥ(阿闍世【あじゃせ】) その1
手塚治虫『ブッダ』
アジャータサットゥは前回お話ししたマガダ国王ビンビサーラとコーサラ・デーヴィーとの間に生まれた。コーサラ・デーヴィーはコーサラ国王パセーナディの妹だったよね。だから、パセーナディ国王を幽閉して王位を奪った息子のヴィドゥーダバ(ルリ王子)とは従兄弟になる。コーサラ・デーヴィーは別名ヴェーデーヒー。漢訳仏典では韋提希【いだいけ】と訳される。ヴェーデーヒーは「ヴェディーハの女」という意味だから、彼女はヴェディーハの出身ということになってしまう。ヴェディーハはヴァッジ国を構成していた8部族の一つで、これだとコーサラ国王の妹だという話とつじつまがあわなくなっちゃうんだけど、まあ2500年の前の話だから仕方ないよね。日本では『観無量寿経』の影響もあって、韋提希夫人でその名が通っているんで、このあとは韋提希夫人と呼ぶことにするね。
アジャータサットゥはビンビサーラ王の多くの王子の中でも最も力量のある王子だったんだけど、なぜかブッダの弟子の中ではシャカ族出身の秀才であるデーヴァダッタと気が合い、デーヴァダッタにたくさんの寄進をしたり、食事に招待したりした。
そうしたある日、ブッダに対抗して独立の教団をすくろうと企てていたデーヴァダッタは、アジャータサットゥをそそのかして、こんなことを言った。
「王子よ、昔は皆長命だったが、いまは短命になった。短命なのはあなたも同じだ。あなたはこのまま王子として世を去るおつもりですか?王になりなさい。父王を殺して王となるのです。私はブッダを殺して新しい教団の指導者となろう」
王子はデーヴァダッタを威力のある聖者と信じていたから、その言葉通り実行しようとした。
王子は刀を腰に隠して宮中に入ったまでは良かったんだけど、ブルブルと震えているのを大臣たちに見咎められ、刀を隠し持っていことがばれちゃった。なぜ刀を隠し持っているかを聞かれた王子は正直に「父を殺すためだ」と答え、尊敬するデーヴァダッタに勧められたからだと告白した。
大臣たちに取り押さえられた王子は、父ビンビサーラ王のところへ引き出された。
「王子よ、何故にそなたは私を殺そうとするのか?」
「大王よ、私は王位が欲しいのです」
「そなたが王位を欲しいというなら、今あげよう。この王位はそなたのものだ」
長い間ブッダの教えを聴き、父子争うことの非をわきまえていたビンビサーラ王は、王子の望みを知ると、自ら王位を退き、マガダ国のすべてのものをアジャータサットゥに譲った。しかし、デーヴァダッタに煽動されたアジャータサットゥはあくまで父を殺そうとし、父王を七重に囲った部屋に閉じこめ、食事をさせないで餓死させようとした。
しかし、アジャータサットゥの母である韋提希夫人は、ひそかに幽閉中の王のもとに食物を運んだ。それが発覚すると、彼女は自分の肌に麦粉と蜂蜜を混ぜて塗り込め、胸飾りの1つ1つに葡萄の汁を詰めて王の部屋に入り、王に与えた。
父王がいつまでも生きているのを不思議に思ったアジャータサットゥは家来に調べさせ、それが母親のはたらきによることを知ると、「私の母は賊だ。賊の仲間だからだ」と言って、母親を殺そうとした。チャンドラプラディーパ(月光)という大臣は「ヴェーダ聖典に説かれるところによると、昔からさまざまな悪王があって、王となるためにその父を殺した者は1万8千人にのぼるが、母を殺したというためしはない。王がもし、その母を殺したら、もはや王位につけておくことは出来ない」と言って、剣の柄に手をかけると、アジャータサットゥは後ずさりをした。さらに、智慧者ジーヴァカ(耆婆【ぎば】、この人はお医者さんでもある)も「母を殺してはならない」と諫めたので、アジャータサットゥは母親も一室に幽閉してしまった。
父王がいつまでも生きているのを不思議に思ったアジャータサットゥは家来に調べさせ、それが母親のはたらきによることを知ると、「私の母は賊だ。賊の仲間だからだ」と言って、母親を殺そうとした。チャンドラプラディーパ(月光)という大臣は「ヴェーダ聖典に説かれるところによると、昔からさまざまな悪王があって、王となるためにその父を殺した者は1万8千人にのぼるが、母を殺したというためしはない。王がもし、その母を殺したら、もはや王位につけておくことは出来ない」と言って、剣の柄に手をかけると、アジャータサットゥは後ずさりをした。さらに、智慧者ジーヴァカ(耆婆【ぎば】、この人はお医者さんでもある)も「母を殺してはならない」と諫めたので、アジャータサットゥは母親も一室に幽閉してしまった。
韋提希夫人が幽閉された後、ビンビサーラ王は餓死したのか?って。それが、死ななかったんだ。何故か?って。王の幽閉された部屋の東側の窓から、霊鷲山【りょうじゅせん】にいるブッダの姿が見え(どんだけ目がいいんだろうね。いやいや心の目で見てるんだよ。)、そのみ姿に礼拝することによって王の心に歓喜が生まれたからだそうだよ。これを知ったアジャータサットゥはその窓を塞ぎ、王の足を刺して立ち上がれないよにうしてしまった。
苦痛のあまり、ビンビサーラ王は声をあげてブッダに救いを求めたそうだ。この声を聞いたブッダは、モッガラーナを呼んで七重の牢獄へ行かせた。飢えに苦しむ王は、モッガラーナから天の神々の世界のうちで、最も食事が美味なのは毘沙門天【びしゃもんてん】であると聞き、次の世ではこの天に生まれたいと願ったそうだ。
ちょうどその時、ラージャガハの城内では、アジャータサットゥの息子が皮膚病にかかって苦しんでいた。アジャータサットゥは我が子可愛さのあまり患部をもみ、さすり、はては口で血の混じった膿を吸った。彼の口はたちまち血膿でいっぱいになり、それを地面に吐き出した。それを見た息子は驚いて激しく泣き出した。
閉じ込められた部屋の中から、これを見た韋提希夫人は大きなため息をついた。
「母上、どうしてため息をつかれるのですか?」
と尋ねるアジャータサットゥに、彼女は言った。
「我が子よ、あなたも子供の頃同じ病気にかかったことがありました。その時、あなたの父君も同じように血膿を口で吸い取られましたが、父君はそれを地面に吐き出さず、飲み込んでしまわれました。地面に吐き出された血膿を見て、あなたが驚いて泣いてはいけない、と父君は思ったからです」
これを聞いた時、初めてアジャータサットゥに憐れみの心が起こった。彼は居ても立ってもいられなくなり、急いで家臣たちを七重の牢獄に行かせ、「王の生存を告げた者には国の半分を与える」と言った。
しかし、ビンビサーラ王は、王の使いが牢獄に急いで来るのを見て、「また私を苦しめるために来るのであろう」と思い、自ら命を絶ち、かねてよりの願いであった毘沙門天の世界に生まれ変わったそうだ。
歴史上、父親を殺して即位した王はたくさんいる。昨年サマルカンドを旅行したんだけど、ティムール朝第4代君主のウルグ=ベクも息子に殺されている。あの英雄ティムールの孫で天文台を造ったりして文化的な功績を残した君主だけど、息子のアブドゥッラティーフに農家の庭先で惨殺されている。隋の煬帝もそうだね。父親の文帝を殺して即位した。兄弟を殺して即位した例になると、枚挙にいとまがないほどたくさんある。
でも、ちょっと待てよ。いくらデーヴァダッタに唆されたと言っても、いきなり父親殺害という行動に出るかな?実はデーヴァダッタはアジャータサットゥの誕生にまつわる秘密を彼に教えて、彼を煽動したんだ。どんな秘密かって。それは次回お話しようね。(つづく)
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