なまぐさ坊主の聖地巡礼

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ホンジュン

Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
 毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴ってまいりましたが、定年退職した途端に喉頭蓋炎で入院。しばらくはその闘病記を綴っていきます。

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ブッダに帰依した人たち その5


ブッダを知りませんか?

アジャータサットゥ
阿闍世【あじゃせ】) その2

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手塚治虫『ブッダ』

  さて、アジャータサットゥ誕生の秘密だけど、聞きたい?そう、聞きたいよね。実はこんな話だ。

 ビンビサーラ王と韋提希夫人との間にはなかなか子供ができなかった。多くの神々に祈って、子供が授かるように願ったんだけど、その兆しすら得ることすらなかった。その時、一人の占い師が占いの結果を王に上奏した。
「山中に一人の仙人がいる。もう少しで寿命が尽きるけれども、死後は必ず生まれ変わって王子となる」
これを聞いた王は大いに喜んで、「その仙人はいつ死ぬんだ?」と聞いた。
「もう3年もすれば寿命が尽きます」
「いや、わしゃ3年も待てない」ということで、王は使者を遣わして仙人に直接頼み込んだ。
「王さまには子供がおらず、後継ぎに困っておられる。方々の神々に祈ったが、未だに子供を得ることが出来ない。ところが占い師によれば、あなたが亡くなって、王子として生まれ変わるとのこと。お願いだから、恩恵を与えて、早くあの世に行ってちょうだい」
  しかし、仙人は「私は3年を経て、はじめて死ぬのであるから、とても王の命令通り、すぐにあの世に行くことは出来ない」と告げた。
 王は「私は一国の主である。わが意を受け入れない以上は殺すほかはない。きっと、生まれ変わって、我が息子とならないことはないだろう」と言い、使いはまた仙人の所へ行って、その旨を伝えた。
 仙人は「我が命はまだ尽きてもいないのに、王は人を遣わして私を殺そうとする。もしも、王によって殺されて、王の子となったならば、逆に人を遣わして王を殺すであろう。この恨み晴らさでか!」と語って、死を受け入れた。

 その夜、韋提希夫人は懐妊した。王はこれを聞いて喜び、早速に占い師を呼んで聞くと、男の子であって、将来王に害を与えることになるであろうと告げた。王は、「たとえ害を受けることがあっても、なんの恐れがあろうか」と不吉な予言を否定しようとしたが、憂いと喜びが交錯し、韋提希夫人に事情を話した。相談の結果、二人はこの子を抹殺することで将来の不安を無くすとともに、世間の噂になることも防ごうと考えた。そこで、出産の時に、高楼から産み落として、赤子を殺そうとした。しかし、赤子は手の指を折っただけで一命を取り留めた。これがアジャータサットゥ誕生の秘密で、アジャータサットゥは別名をバーラルチ(折指)を呼ばれたそうだ。父親を殺す運命を背負って生まれて来たのがアジャータサットゥであった。

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 手塚治虫の『ブッダ』では、父親を殺害すると予言されたビンビサーラ王が赤子のアジャータサットゥを絞め殺そうとした、となっている。

 デーヴァダッタがビンビサーラ王殺害の話を持ちかけた時、アジャータサットゥは大いに怒ったそうだ。そこで、デーヴァダッタは「太子よ怒ってはならない。あなたの父王は実はあなたに対してどんなことをしてきてきたのか知ってるのかい」と言って、アジャータサットゥ誕生の秘密を話してきかせたんだ。太子の手の小指がその証拠であると告げた途端、太子は父子の情を捨てて、ビンビサーラ王を七重の牢獄に幽閉したというわけなんだ。

 アジャータサットゥがお母さんの韋提希夫人も幽閉したという顛末については前回お話した通りだ。突然の幽閉に錯乱した韋提希夫人はブッダに救いを求めたそうだ。狭い部屋に閉じ込められた韋提希夫人はすっかりやつれながらも、霊鷲山におられるブッダを礼拝し、お会いしたいと願った。礼拝して頭をあげた時、ブッダはモッガラーナとアーナンダを従えて、すでに部屋の中におられた。韋提希夫人は自分の身につけていた首飾りなどを断ち切って、我が身を大地に投げ出して、号泣しながら、ブッダに訴えた。

「世尊、われ、むかしなんの罪ありてか、この悪子を生める。世尊、またなんらの因縁ありてか、提婆達多と共に眷属【けんぞく】となりたまえる。
 ただ、願わくは世尊、わがために広く憂悩なきところを説きたまえ。われ、まさに往生すべし。閻浮提【えんぶだい】の濁悪世【じょくあくせ】をねがわず。この濁悪のところには、地獄・餓鬼・畜生盈満【ようまん】して不善聚多し。願わくは、われ未来に悪声を聞かず、悪人を見ざらん。いま世尊に向かいて五体を地に投じて、哀【あわれみ】を求めて懺悔【さんげ】す。ただ願わくは仏日、われをして清浄業のところを観せしめたまえ」


「ブッダよ、私は以前にどのような罪を犯したことによって、このように悪い子を生んだのでしょうか?また、ブッダはどんな因縁によって、デーヴァダッタを親族となさっておられるのでしょうか?
 ただお願いするのは、ブッダよ、私のために、広く憂い悩みのない世界を説いていただきたい。私はその世界に往って生まれ変わりたい。私はこの濁りきった悪いこの世にいたくはありません。この世には地獄・餓鬼・畜生の世界に住む悪人が満ちています。その世界に生まれ変わってからは、悪い声を聞いたり、悪人を見たくありません。今、ブッダに向かって五体投地し、ブッダの救いを求めて懺悔します。願わくは、無明の闇を破って輝く太陽のごときブッダの徳によって、清浄な修行で得たブッダの世界を見せてください」

 随分長くなったけど、『観無量寿経』からそのまま引用させてもらった。

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 苦悩や憂いのない世界を求めた韋提希夫人に対し、ブッダが説いたのが阿弥陀仏の極楽浄土の世界であった。でも、これって少しおかしいと思わない。だって、韋提希夫人が「私がどんな罪を犯したから、こんな悪い子を生んでしまったのだろうか?」と言ってるけど、大きな罪を犯してるじゃない。子供欲しさに仙人を殺したのはビンビサーラ王かもしれないけど、ことの顛末を知って我が子を殺そうと計画したのは紛れもない事実だ。それに「なんでブッダとデーヴァダッタが親戚なの?」と言ってるのは、明らかにデーヴァダッタに唆されたから太子が父親を殺そうとしたんだと、デーヴァダッタに責任転嫁しちゃってるよね。その上、ブッダに懺悔すると言ってるけど、自分が犯した罪を一切告白せずにする懺悔なんてあるんだろうか。それはただ口先だけの懺悔に聞こえる。まあ息子に幽閉されて錯乱状態だったにせよ、僕にはあまりにも身勝手な要求に思えてしまう。

 こんなこと言ったら、浄土門のお坊さんに叱られちゃうかも知れないけど、ブッダは韋提希夫人の苦しみを癒すために極楽浄土の世界を示したに過ぎず、鎮痛剤で一時的に痛みを止めるようなもんじゃないかな(ちょっと、言い過ぎかな)。だって、極楽世界に「往って生まれる」だけで、悟りを開いてブッダになれるなんて一言も言ってないもんね。やはり、われわれがブッダとなれるのはこの娑婆世界だけで、ほかの世界では絶対ブッダになんかなれっこないんだよ。

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 以上のお話が「王舎城の悲劇」と言われている。結局、アジャータサットゥを唆したデーヴァダッタはたびたびブッダ暗殺を謀り、最後の自分の爪の間に毒を塗り、ブッダを傷つけて暗殺しようとしたが、自分の指先の小さな傷から毒が回りあえなく死んでしまう。一方、アジャータサットゥは父殺しの悪業の因縁なのか、悪性の腫れ物に苦しめられ、しだいに自分の罪を悔いるようになった。

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 この時、ブッダを訪ね懺悔するように勧めたのが、前回も出て来たけど医師のジーヴァカ(耆婆【ぎば】)だ。この人はパキスタンのタキシラでピンガラに7年間医学を学び、当時インド一の名医とうたわれた人だ。タキシラはガンダーラ地方の中心都市。「ガンダーラ紀行」で詳しく書いているので、興味あったら読んでみてね。

 ブッダを訪ねたアジャータサットゥは、こう告白した。
「私は、たとえデーヴァダッタの言葉に動かされたとはいえ、自らの手で父王を殺害してしまいました。デーヴァダッタの惨めな最期を耳にし、私もわが罪によって大地に飲み込まれてしまうのではないかと毎日恐れています。どうしたら安楽の生活に戻れましょうか?」
 ブッダは法を説き、
「王よ、あなたは愚かさと不善によって父王を殺した。しかし、今日、罪科を認め、法に従って懺悔したので、その罪科を私は収めておきましょう。それは、自らの罪科を認め、法にならってこれを懺悔し、それによって将来、自ら慎むのであれば、これは聖者の戒めの栄えるもとであるからです」
 と、アジャータサットゥの懺悔を受け止めたたそうだ。どんな悪行をはたらいても、心から懺悔すれば、その人は聖者となれる。これはアングリマーラの時にもブッダが強調したことだったよね。


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ラジギールの七葉窟

 
これを機にアジャータサットゥはブッダに帰依するようになり、不治の病と思われた腫れ物も癒えたそうだ。ブッダに帰依してからのアジャータサットゥは積極的にブッダを供養し、教団のために尽くした。ブッダが亡くなった直後にラージャガハで行われた第一結集【けつじゅう】の時には、アジャータサットゥは18の寺を修理し、七葉窟を修理し、修行僧を供養したと伝えられている。

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テーマ:仏教・佛教 - ジャンル:学問・文化・芸術

【 2014/10/24 17:22 】

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