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なまぐさ坊主の聖地巡礼

プロフィール

ホンジュン

Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
 毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴ってまいりましたが、これからしばらくは世界史のミラクルワールドをお届けします。

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インド洋の真珠スリランカーポロンナルワ③

8月3日(木)

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 午後2時25分、クワドラングル(寺院群)を出発、わずか12分でガル・ヴィハーラに到着。フロント部分になんか変な物をつけたバスが……。小麦の穂のように見えるけど、交通安全のお守りかな?

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たくさんのお猿さんに迎えられてガル・ヴィハーラへ。ガル・ヴィハーラ(石の寺)はパラークラマ・バーフ1世により建立された寺院で、ポロンナルワの仏像の中で最高傑作とされている。大きな花崗岩の一枚岩に左から座像、岩丘を掘り抜いた壁龕【へきがん】内の座像、そして右側に立像と涅槃像の4体の仏像が彫られている。これだけ大きいと1枚の写真に入りきらないし、現在は屋根があって見辛いんで、画像はネットから借りてきた。左から順に見ていこう。

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 瞑想するブッダで、高さは4.6メートル。仏像のドレープ模様が背後の岩の断層の模様と連続しているので、一枚岩から掘り出したことが分かる。衣を纏っていないように見えるけど、よ~く見てもらうと、偏袒右肩【へんだんうけん】(右肩を出して、左肩を袈裟で覆う着方)で透けるような袈裟・衣を纏っている。静かに眼を閉じた穏やかな表情に吸い寄せられそうになる。

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 壁龕内の座像。大きさは等身大程度だけど、鉄格子が張られていて中に入れないことや、お供物が捧げられていることから、恐らくこのお寺のご本尊かな。ブッダの両脇には払子【ほっす】を手にした像が2体立っている。払子はインドでもともとは蠅や蚊などの虫を追い払うために使われた道具だけど、仏教に取り入れられて坊さんの威儀を示すものとなり、僕たちも導師を勤める時には必ず手に持つ。

 ここで一つ疑問がわいた。スタイル的には仏三尊像だけど、普通ブッダの脇士となるのは文殊菩薩と普賢菩薩。でも、この2菩薩は大乗仏教のもので、上座部仏教にはこれらの菩薩は存在しない。じゃ、この2体の像はいったい誰?

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 で、ネットで探してそっくりな仏像をみつけた。これインドのマトゥラー出土の釈迦三尊像で、両脇で払子を持っているのは菩薩。ひょっとしたら、壁龕内の座像は大乗仏教のものじゃないのかな。ただね、マトゥラーのブッダの右手は施無畏印になっており、疑問は深まるばかり。誰かスリランカ仏教について詳しい人はいませんか。

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 この壁龕には僅かながら壁画が残っている。鉄格子があって撮影が難しく、やっと撮れたのがこの写真。分かりづらいけど、真ん中の上部にガンダーラっぽい菩薩らしき顔が見える。壁画が全部残っていれば、もっと詳しいことが分かるのに残念。

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 いくら考えても分からないから、次へ行こう。高さ7メートルの見事なブッダ立像。屋根が雰囲気をぶち壊してるけど、仏像を護るためには仕方ないか。でも、もうちょっと立派のものにして欲しいもんだ。左右の足を交叉させている菩薩像なら中国の敦煌莫高窟で見たことあるけど、胸の上で腕を組んでいるブッダ像は今まで見たことがない。人生の辛さを哀れむ、悟りを開いたブッダの姿とされている。

 が、仏弟子のアーナンダだという説もある。

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 と言うのは、右側に全長14メートルの巨大な涅槃像があるからだ。スリランカには寝仏がたくさんあって紛らわしいけど、左右の足が前後にずれているんでこれは紛れもなく涅槃仏。

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 80年におよんだ伝道の旅を終えられた安堵感が伝わってくる、非常に安らかな表情をしておられる。さっきの立像が胸で手を組んで、あまりにも悲しげな表情をしているから、最後までブッダにつき従ったアーナンダがブッダの死を悲しむ姿ではないのか、という説も生まれた。

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 でも、アーナンダということはあり得ない。なぜなら、立像の足元を見てもらうと、蓮の華の上に立ってるよね。蓮華座に立つことは、ブッダにしか許されていないからね。ということは壁龕内の座像を除く3体は、左から順に、「人間の苦悩について深く瞑想しているブッダ」、「悟りを開き、その感慨に耽っているブッダ」、そして「80歳で入滅された時のブッダ」だと、いうことになる。

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 実は一つ見逃したことがある。というのは、僕は前もって調べて行くことをせず、第一印象を大事にするスタイルをとっている。だから、ジャヤン君の説明もろくに聞かずに写真ばっかり撮っていた。ネットでいろいろ調べているうちに「石仏散歩」というブログを見つけた。そこで知ったのが、立像の手前にある石碑の存在。石碑には次のような内容のことが書かれてるんだって。

 偉大なる王パラクラーマ・バーフ1世王は、頭を抱えていた。折しも、上座部派、密教派、大乗派と3派が入り乱れ、スリランカ仏教界は混乱していた。権力者ではあっても在世信者の王は、出家者に指図はできない。混乱をまとめるよう長老に委嘱する。1000人にのぼる比丘たちは、1年の議論を経て、一つの結論を出した。それは、上座部仏教を正統とするものであった。

 なーんだ、スリランカにも大乗仏教が伝わってたじゃないか。インドから一番近い国だから当然と言えば当然だけど、長いこと世界史を教えていて、スリランカには上座部しか伝わっていないと思い込んでいた。反省、反省(もう辞める頃になってね)。だったら、大乗仏教の影響を受けていても不思議じゃない。

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 実はこの遺跡はスリランカでも一番厳しくて、仏像と一緒に人間が写真に収まることを禁止している。でも、Iさんから貰った写真には、なんと涅槃仏と僕が一緒に写ってる。僕が頼んだ訳じゃないから、僕は無実です。でも、いい記念になりました。

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 ガル・ヴィハールは駐車場からかなり離れている。その行き帰りを一人のしつこい土産物屋がついて来た。ブロンズのガネーシャ像がなんと1個5,000円だとぬかしやがる。冗談じゃないよ。ここでも要らないと言ったんだけど、しつこい、しつこい。よっぽど売り上げ上がってないんだろうね。また、なっちゃんが欲しそうな顔してる。しゃあないから、粘り強い交渉の結果、2個1,000円で買った。甘い、甘い。

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 今日の気温は38度。お寺の見学は裸足になるので、焼けた砂の上を歩く。下から炙られ、上からは容赦ない紫外線を浴びて、もう喉はカラカラ。奥村君が気を利かせて、ココナッツウォーターを飲ませてくれた。スリランカ原産の黄色いキングココナッツ。店のおばちゃんが鉈で割ってストローを差してくれる。

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 どう、この笑顔。よく冷えたココナッツウォーターが砂漠に染み込んでいく水みたいに、喉から食道、そして胃へと流れ込み、涸れ涸れになった身体全体に染み渡っていく。美味~い、もう最高。味はスポーツドリンクみたい。量的にも申し分なくて、1リットルほどあるんじゃないかな。これで1個100ルピー(75円)はお買い得。スリランカの人はこれを水代わりに飲むというから幸せだね。

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 なっちゃんは婆ちゃんと仲間っこ。

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 飲み終わったら、おばちゃんに真っ二つに割ってもらい、中の胚乳の部分を刮げて食べる。この部分がココナッツオイルになるんだけど、これが仄かに甘くチュルチュルしていて美味い。昔タイでも食べたことあるけど、もっと堅かった。キングココナッツというくらいで、最高でした。一遍に生き返りました。ごちそうさま。(つづく)

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【 2018/02/19 17:36 】

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