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なまぐさ坊主の聖地巡礼

プロフィール

ホンジュン

Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
 毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴りながら、仏教や歴史について語ります。

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ベナレスー祈りと怒り!!!!

2月28日(木)

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 午前5時30分、ホテルを出てガンジス川のマニカルニカー・ガートに向かう。ベナレスの街中はまだ真っ暗。ガンジス川はサンスクリット語でガンガー。漢訳仏典では恒河【ごうが】と表記し、恒河沙【ごうがしゃ】といえばガンジス川の砂のことで、10の52乗。インド人の単位はスケールが大きい。

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 ガートはガンガー沿いに続いている階段状のスペースで、巡礼者が沐浴したり、クリーニング屋さんが洗濯する場所になっている。火葬場も併設されていて、ベナレスでは多い日には100体もの遺体が運ばれてくるそうだ。遺体はガンガーに浸されたのちにガートで荼毘【だび】にふされ、遺灰はガンガーへ流される。だから、ヒンドゥー教徒は墓が要らない。したがって、日本みたいに墓地経営でがっぽり儲け、外車を乗り回し、銀座の高級クラブで飲んだくれているような坊さんはいない(もちろん僕のことじゃないよ)。金が無い人、赤ん坊、妊婦、蛇に噛まれて死んだ人はそのまま流されるんだって。火葬場の撮影は絶対厳禁なんで、もちろん写真はないんだけど、ネパールでは撮影自由だったんで、乞うご期待。そんな気持ち悪いもの、誰も期待しないか。(笑)

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 今日も観光客を乗せたたくさんの船が出ている。

ガンジス1 

 僕と奥さんが手に持っているのは、日本風に言えば灯籠流しのミニ版。自分の意志ではなく、強制的に渡される。何かを祈りながら、これをガンガーに流す。平成5年に初めて来た時は真剣に祈ったもんだが、この儀式も4回目なので惰性的にただ水に浮かべた。

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 ガートには真っ赤な衣装に身を包んだ行者が祈りをささげている。いやー、格好いいね。初めて来た時は珍しくて、沐浴するヒンドゥー教徒の写真を何枚も撮ったもんだけど、もう飽きちゃって、今回撮したのはこれ1枚だけ。ブログ書くこと分かってたら、もっと撮したんだけどね。

ガンジス2 
 このベナレスがヒンドゥー教最大の聖地とされ、多くのヒンドゥー教徒はここベナレスで死ぬことを望む。ここで亡くなり遺灰がガンガーに流されれば、輪廻からの解脱を得られると信じているからだ。聖なる山ヒマラヤに流れを発したガンガーは東に流れてベンガル湾に注ぐのだが、唯一このベナレスで北上(北流)する。北に向かうということはヒマラヤに向かって流れることだから、ガンガーが天に昇っていくイメージと重なり、インド至高の死に場所とされるわけだ。
 深い河

 40代以上の方ならご存じだと思うけど、平成7年に公開された遠藤周作原作の『深い河』。秋吉久美子がここベナレスで沐浴するシーンが話題になった。それから沐浴する日本人の若者が増えたんだけど、ヒンドゥー教を信じてもいない奴が沐浴してどうする、アホか。その上、聖なる川ではあるが、死体は流れるし、生活排水も流れ込んで来て、大腸菌うようよの超汚い川なんだ。病気になっちゃうぞ。

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 平成9年にベナレスに来た時の嫌な思い出がある。当時は海外携帯なんて無いから、日本への連絡はホテルの電話を使うんだけど、これがめちゃ高くて、5,000円位かかった。これが町中のISDという電話屋さんでかけると安いんで、I上人と二人でISDへ。電話をかけ終わってホテルに帰ろうとしたら、髭面のおっさんが流暢な日本語で話しかけてきた。「コノ前、秋吉久美子ガウチノ店来タンダゼ。チョット寄ッテカナイカ?」この声に釣られてのこのことついて行ったら、2階にある店に連れて行かれ、入った途端に鍵を掛けられてしまった。この手の商売は一度ブダガヤで経験していたのに、また引っかかってしまった。何か買うまで返してあたらないということだ。要りもしないシルクのスカーフを1枚買って、這々の体で店から逃げ出したが、皆さんも気をつけましょうね。子供じゃないけど、知らない人について行ったらダメですよ。

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 そんなことを思い出しているうちに、午前6時25分、いよいよ日の出だ。ガンガーの東岸にはまったく人家がなく、死の世界のように映る。そこに生命の象徴のような赤い太陽が昇る。感動的ですらある。最初来た時はもちろんフィルムの時代だったんだけど、昇る太陽の写真だけで36枚撮りを2本も使って、あとから苦笑いだ。来る度に撮る枚数は減って、今じゃデジカメだからなんぼ撮ってもいいのに、今回は7枚だけ。

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 午前7時、ヒンドゥー教の世界を十分に堪能してホテルに帰る。ガートから大通りに出るまでの道がまた狭い。

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 時々、牛に出くわす。それにしても、この牛汚い牛だね、痘痕【あばた】だらけだ。なんてこと言ったら、ヒンドゥー教の神さまに怒られちゃう。なんせ牛は最高神シヴァの乗り物だから、神聖で偉いんだ。

shiva2[1] 
 シヴァ神は破壊の神であると同時に創造の神でもあって、インドで一番崇拝されている神だ。ちなみに頭から噴水みたいなものが出てるけど、これがガンガー。ガンガーはもともと天上を流れていた川。ブラフマー神にお願いして地上にも流してもらうことにしたんだけど、そのままじゃガンガーの落下の衝撃に地上世界が堪えられないんで、シヴァ神がいったん頭で受け止めて髪を伝って地上に流れてるんだって。シヴァ神の横にいるのがナンディという牛の神さま。だからインド人は牛を虐めたり、殺したり、もちろん食べたりしない。牛にとってインドは天国みたいなところなんで、インドには水牛と合わせると2億8000万頭もいるそうだ。だから、町中どこにでも牛がいる。牛は当然ウンチを垂れる。狭い道にウンチがいっぱい落ちている。だから下を見て歩かないと、牛の糞を踏んでしまう。でも下ばっかり見て歩いていると、牛にぶつかってしまう。

 ガンジス3

 時々、お乞食さんにも出会う。奥さん乞食に捕まっちゃった。こんな時は毅然とした態度で断る。でも、今回はハンセン病の乞食には出会わなかったな~。狭い道で手の指が欠けてしまったハンセン病の人に、ニュウッと手を出されると、感染することはないし、差別してはいけないと分かっていても、背筋に冷たいものが走って、自己嫌悪に陥ってしまう。会わなくて良かった。

ガンジス4 
 狭い道をやっと抜けて、サイクルリキシャでバスに。リキシャは日本の人力車からきてるけど、最近人力のものは減っている。
  コスミック
乗るはずだったコスミック航空の機材

 午後2時45分、ベナレス発のコスミック航空(F5)でネパールのカトマンズに飛ぶ予定だった。ところが、4日前に奥村君に機体整備のために運行を取り消したとの連絡が入ったそうだ。慌てた奥村君、急遽、同じ区間を就航するインディアン航空(IC)に予約したんだけど、もう予約がいっぱいの状況。やっと今朝になって我々16人の席が確保できたそうだ。そんな訳で、午前中に空港に行って、空港内のレストランで昼食を済ませた。

 空港内はヨーロッパ人でごった返している。この連中はコスミック航空の2機を使ってカトマンズに飛ぶんだと。これでコスミック航空が定期便を取り消した理由が判明した。奥村君が予約した後にヨーロッパ人の団体の予約が入ったけど、機体が足りない。そこで定期便を取り消しにして、予定より2時間早い臨時便を2機飛ばして、ヨーロッパ人を優先して儲けようとしたんだ。この野郎、同じアジア人のくせして、ヨーロッパに媚び売るんかい。

 泣き面に蜂とは言うが、今度はインディアン航空が16人のうち5人の予約が確認出来ないと言い出した。インドではダブルブッキングは発中後【しょっちゅう】あり、僕も何回か経験している。これが列車だったら、どっちかが立っていれば済むけど、飛行機はそうはいかない。インディアン航空が「修理中の席が4席あるので、到着後にパイロットと相談して飛んでもらう」と言うので、奥村君だけ車で夜通し走ってカトマンズで合流することにして、飛行機が到着するのを待った。ところが、結局1席は壊れていて乗れないという。これじゃ2人が乗れない。奥村君に加え、団長さんか僕が車で追っかけるという手もあったが、急遽全員車でクシナガラまで行くこととなった。それにしてもインディアン航空もいい加減だ。16席確保できないんだったら、最初からそう言えよな。

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 午後2時30分、トヨタ「イノーバ」4台に分乗してクシナガラに向かう。最初の予定ではベナレス→カトマンズ→ポカラとなっていたが、クシナガラで一泊して車で国境を越え、バイラワ空港からポカラ→カトマンズという逆コースととることになった。クシナガラは釈尊の涅槃の地。今回の旅で行く予定にはなっていなかった。きっと釈尊がインドまで来とって、なんでクシナガラに来んのじゃい、と罰をお当てになったのかも知れんな。ベナレス~クシナガラは270キロ。イノーバはひた走る。いつもバスで移動してるから、高い位置から街を眺めてるけど、乗用車だと低い位置になるので目線が変わってなかなかいいや。これも怪我の功名。ものごとは何でもいい方に考える。そうすると、さっきの7個の怒りマークも消えるというもんだ。

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 3時間あまり走って、午後5時50分、ドーリーガートという町に到着。チャイタイムとトイレ休憩をとったが、ここでも結婚式があるみたいだ。花嫁さんの姿を見てみたいが、そんな時間はない。すぐに出発して、クシナガラを目指す。そのうち暗くなって来た。日本みたいに田舎の道も煌煌と街路灯が輝いているという国ではないから、真っ暗け。そこを4台のイノーバがひた走る。ゴン。「おい今の音とショックはなんだ?」「どうも犬をはねたみたいだぞ。」「降りて見なくてもいいんかい。」運転手は知らん顔で走り続ける。なんせ、はねた人間がシュードラだったら警察にも届け出しないという噂のある国だから、犬なんて石ころと一緒なんだろう。おお、恐。

 午後9時45分、ようやくクシナガラのロイヤル・レジデンシー・ホテルに到着。ほとんど休憩を取らずに7時間ぶっ飛ばして、疲れ果てました。おやすみなさ~い。(つづく)

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【 2014/03/03 14:34 】

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