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なまぐさ坊主の聖地巡礼

プロフィール

ホンジュン

Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
 毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴りながら、仏教や歴史について語ります。

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法華経の女人 千日尼御前御返事⑧

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波木井の御影(身延山久遠寺蔵)

千日尼御前御返事せんにちあまごぜんごへんじ

 漢土かんど沛公はいこうと申せし人、王の相ありとて秦の始皇の勅宣ちょくせんくだして云

く、沛公ちてまいらせん者には不次ふじしょうを行ふべし。沛公は里の中に

は隠れがたくして、山に入りて七日二七日なんどありしなり。その時命

すでにをわりぬべかりしに、沛公の妻女つま呂公りょこうと申せし人こそ、山中を尋

ねて時時よりより命をたすけしが、彼は妻なればなさけすてがたし。

 これは後世ごせををぼせずば、なにしにかかくはをはすべき。またその故

に或は所ををい、或はくわれう(科料)をひき、或は宅をとられなんど

せしに、ついにとをらせ給ぬ。法華経には過去に十万億の仏を供養せる

人こそ、今生こんじょうには退たいせぬとわみへて候へ。されば十万億供養の女人な

り。

 その上、人は見る眼の前には心ざしありとも、さしはなれぬれば、心

はわすれずともさてこそ候に、ぬる文永十一年より今年弘安元年まで

はすでに五ケ年が間、この山中に候に、佐渡の国より三度まで夫をつか

わす。いくらほどの御心ざしぞ。大地よりもあつく、大海よりもふかき

御心ざしぞかし。

 釈迦如来は我が薩埵 さった王子たりし時うへたる虎に身をかい(飼)し功

徳、
尸毗王しびおうとありし時、鳩のために身をかへし功徳をば、我が末の

くのごとく法華経を信ぜん人にゆづらむとこそ、多宝・十方の仏の御前

にては申させ給ひしか。

【現代語訳】

 中国の※ 1公という人は王になる人相をしていた。そこで※ 2の始皇は勅宣を下して、

「沛公を打ち殺してきた者には、多大の賞を授与する」と言った。沛公は村里の中には

穏れるところがなくなり、山の中へ逃げ入って1週間から2週間にも及んだ。その時に

食物もなくなり命もすでに尽きようとしていたおり、沛公の妻である呂公という人が、

ひそかに山中を尋ねてときおり食物を届けたということであるが、彼の場合は妻なの

で、なさけのうえからも捨ててはおかれなかったからである。

 今あなたの場合は、後世のことを思わなかったならば、なんでこのように尽くしてく

れることが出来ようか。またそのためにあるいは住む所を追われ、あるいは科料※ 3かりょうに処

せられ、あるいは住宅を取り上げられたりしたが、ついにわが意を通して、心をひるが

えさなかった。法華経の法師品には、「過去の世に10万億の仏を供養した人だけが、今

生においてどのような困難にあっても退転せずに仏に成れる」と書かれている。もしそ

うだとしたらあなたは、過去世に10万億の仏を供養した女性である。

 そのうえ、人間というものは自分の眼の前では、いろいろと心をこめた世話をしてく

れるものだが、眼の前から遠く離れてしまうと、心の中では忘れていなくとも、つい疎

遠になってしまうものである。それなのに、去る文永11年(1274)より今年弘安元年

(1278)までの5か年の間に、この身延山へ佐渡の国から3度も夫である阿仏房を旅立

たせられたことは、どのような御心ざしによるものであろうか。さながら大地よりも厚

く大海よりも深い御心ざしである。

 釈迦如来は、その※ 4薩埵王子としての修行中には、飢えた虎にわが身を与え、※ 5毗王

として生まれた時は鳩のためにわが身を鷹に与えた、その功徳を、我が末法の時代にこ

のように法華経を信ずる人に譲り与えられると、※6宝・十方の諸仏の御前で言明されて

おられたのであろうか。(つづく)

【語註】

 ※1 沛公:前漢を建国した劉邦のこと。人間的に魅力あふれる人物だったようで、
            多くの優秀な人材が彼に付き従った。項羽と天下を巡って争い、勝利した。

 ※2 秦の始皇:秦の始皇帝のこと。自らの徳は、三皇五帝にも勝れているとして皇
            帝を名乗った。前221年に中国を統一して絶対王政を敷いた。急激な拡大と強
            圧政治に対する反動のため、死後数年にして帝国は崩壊した。

 ※3 科料:罰金。

 ※4 薩埵王子:『金光明経』などに説かれる釈尊の過去世の修行時代の名前。王子
            は、飢えた虎とその7匹の子のためにその身を投げて虎の命を救ったという。
            法隆寺蔵の玉虫厨子に描かれた捨身飼虎図に描かれているのが薩埵王子であ
            る。

 ※5 尸毗王:釈尊の過去世物語の一つに登場する王で、鷹に追われた鳩を助けるた
            めに自分の肉を削って与えた。

 ※6 多宝・十方の諸仏:『法華経』で釈尊滅後の弘教の付嘱の場面となった虚空会
            に登場した過去仏の多宝如来と、十方から集まってきた諸仏。

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テーマ:仏教・佛教 - ジャンル:学問・文化・芸術

【 2024/02/15 05:46 】

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