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なまぐさ坊主の聖地巡礼

プロフィール

ホンジュン

Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
 毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴りながら、仏教や歴史について語ります。

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ブッダの生涯 その4


ブッダを知りませんか?



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 ウルヴェーラーのセーナー村の森でシッダールタの苦行が始まった。苦行はサンスクリット語でタパスと言うんだけど、本来は“熱”や“熱力”という意味だから、まあエネルギーだと考えればいいね。身体を痛めつけて精神を鍛えることで、体の中に特殊なエネルギー、神通力が蓄えられると考えたんだ。日本でも比叡山の千日回峰行や日蓮宗の大荒行があるし、イエスさまも荒野で40日間断食をされてるけど、苦行の本場はなんと言ってもインド。シッダールタと同じ頃に活躍したマハーヴィーラは12年間苦行を続けてついに悟りを開きジャイナ教の祖となったし、今でもインドには苦行を行っているヒンドゥー教のサドゥー達がいる。
 
 森の中で一人で住むのは怖いよね。夜ともなれば漆黒の闇の中、虎などの猛獣が近づいて来ただろうし、コブラのような毒蛇がまわりをはい回る。僕なんかとてもじゃないけど耐えきれなくて、きっとすぐに逃げ出してしまうよ。大樹の下や石の上で足を組んで座り、出る息と入る息を自在にあやつり呼吸を止める。断眠法や断食法もやった。だんだん食事の量を減らしていって、ついには一日にゴマ一粒米一粒にまで減らしちゃう。夏は暑いままに冬は寒いまま、じっとして蚊やアブや蛭が血を吸っても払いのけることもしない。
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画像はサタン

 苦行の妨げになるのは肉体的苦痛だけじゃないぞ。ときどき悪魔が現れるんだ。ヨーロッパではサタンやデーモンという悪魔がいるけど、インドではマーラー、ナムチ、パピーヤス、ヤクシャなんていうのが有名どころだ。マーラーは“殺す者"という意味。悪魔の「魔」は中国でマーラーの音をとったんだけど、それだったら「麻」の字で事足りるのにわざわざ「鬼」をくっつけて出来た漢字だ。それに悪をつけて、悪魔というわけだ。ちなみに男の人の◯◯を「まら」と言うけど、これはお坊さんの使った隠語。◯◯は修行の邪魔をする性欲のシンボルだからね。あっ、邪魔も悪魔だね。要するに悪魔というのは人間の心の中に潜んでいる欲望のことだ。 

 苦行するシッダールタの前に現れたのはマーラーではなくて、ナムチだ。マーラーはまた後で出てくるよ。ナムチはインド神話ではインドラ神の不倶戴天の敵だ。ああそうだ、インドラ神は仏教に取り入れられて守護善神となって、日本では帝釈天として信仰されてる。『フーテンの寅さん』の切り口上にも出てくるよね。

 そのナムチがシッダールタの苦行を止めさせようと、甘い言葉で誘惑するんだ。

 「あなたは痩せていて顔色も悪い。あなたの死が近づいた。あなたが死なないで生きられる見込みは、千に一つの割合だ。きみよ、生きよ。生きたほうがよい。命があってこそ諸々の善行をなすこともできるのだ。『スッタニパータ』)

 シッダールタはこう答える。

 「 わたくしは修行に専念していて、(呼吸を整するところからくる)激しいこの風は河の流れを涸らすだろう。ましてや我が身の血も涸れるのにちがいない。血が涸れたら胆汁も痰も涸れるだろう。肉がそげ落ちるにつれて、心はよりいっそう澄んでくる。わたくしの正念と智慧と統一した心はますます安定したものとなる。わたくしはこのような状態にあって、最大の苦痛を受けているのだから、わたくしの心は欲望にひかれることはない、見よ、心身の清らかなることを」(『スッタニパータ』) 

 ナムチはさらに次々とシッダールタに攻撃をしかけてくる。

 「 汝の第1の軍隊は欲望であり、第2の軍隊は嫌悪であり、第3の軍隊は飢渇であり、第4の軍隊は妄執といわれる。汝の第5の軍隊はものうさ、睡眠であり、第6の軍隊は恐怖といわれる。汝の第7の軍隊はみせかけと強情と、誤って得られた利得と名声と尊敬と名誉と、また自己をほめたたえて他人を軽蔑することである。ナムチよ、これらは汝の軍勢である。黒き魔の攻撃軍である。勇者でなければ、かれにうち勝つことができない。……命はどうでもよい。わたくしは敗れて生きながらえるよりは、戦って死ぬほうがましだ。」(『スッタニパータ』)


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 ナムチは6年間にわたって執拗な攻撃を続けたが、シッダールタにはつけ込む隙がなく、ナムチは敗れた。しかし、極限まで自らを追い込んだ苦行の結果、シッダールタは立つことすら出来なくなってしまう。立とうと思うと前に倒れてしまい、座禅を組んでいると後ろに倒れるといったありさま。ここにあげた写真は、パキスタンのラホール博物館にあるガンダーラ出土の釈迦苦行像だ。平成18年にパキスタンに行ったんだけど、残念ながら時間がなくて観れなかった。いつも最初に出てくるのはお顔の部分だけだけど、見てごらん。 眼は大きく落ちくぼみ、身はやせ細り、お腹の部分は木の空洞のように深くくぼんでしまっている。肋骨が一本一本浮き出ていて、血管が走り、腕はまるで枯れ枝のようになってしまってる。僕はこの写真を見るたびに涙が出てくるんだけどね。 

 6年間の苦行によって、シッダールタは欲望を自分の思いのままに抑制することはできるようになった。でも、心にうなずくものがない。後にブッダはこう語っている。

 「この実践、この難行によっても、わたくしは人間のレベルを超えた特別のすぐれた聖なる洞察を得ることができなかった。なぜなら、聖なる智慧が達せられていなかったからである。聖なるこの智慧が得られたならば、それは解脱に導くものであり、それに従って行ずる人の苦しみを正しく滅するためのものなのである。」(『中部経典』
  
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ブダガヤ スジャータ寺院の祠内部

 シッダールタは苦行を止めてしまう。「まずは食べて体力することだ」と、シッダールタは森を出て、セーナー村に行った。この時たまたま通りかかったのが村の娘スジャータ。いつも修行僧に乳がゆを供養していた女の子だ。この子からシッダールタは乳がゆの供養を受け、体力を回復する。「褐色の恋人スジャータ」という「めいらくグループ」が発売しているコーヒーフレッシュがあるけど、乳つながりで命名されたそうだ。スジャータは古代インドの女性名で、“良い生い立ち、素性”を意味するそうだが、僕は世界史の授業で彼女をシュードラの娘として紹介している。バラモン・クシャトリヤ・ヴァイシャ・シュードラの4階級からなるヴァルナ制では、穢れということを重視するので、階級の違うものが同じ場所で食事をしたり、階級の下位の者から食事を受け取ってはならない。シッダールタはもちろんクシャトリヤだから、シュードラの娘スジャータが差し出す乳がゆを受け取って食してはならない。だから、乳がゆを食べられたということは、ヴァルナ制、つまりカーストを否定する高らかなる宣言であった、とね。 

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 乳がゆで体力を回復したシッダールタは、近くを流れるネーランジャラー河(尼連禅河【にれんぜんが】で身を清め、あたりに落ちているぼろ布を拾って身につけ、それを衣服がわりにして村や町で托鉢を始めたんだ。このぼろ布をつぎ合わせたものを糞掃衣【ふんぞうえ】というんだけど、サンスクリット語ではカシャーヤ。英語のカーキ色、つまり褐色のことで、僕たち坊さんが身につける袈裟【けさ】のことだ。
 シッダールタの苦行にずっとつきあっていた5人の修行者がいた。実はこの5人は出家したシッダールタの身辺の面倒をみさせるために、スッドーダナ王が同行させた家来なんだ。まあ、親馬鹿というやつで、息子のことが心配でしようがなかったんだよね。この5人は出家してシッダールタとともに修行してたんだけど、シッダールタが森を出て乳がゆを食べる姿を見て、がっかり。「あいつは苦行を放棄した。あいつは堕落者だと」とあきれて、彼のもとを去り、ムリガダーヴァということろに行っちゃうんだ。この5人はまたあとから出てくるから、覚えておいてね。

 
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 このあとシッダールタは 瞑想するためにプラ・ボーディギリという山の中腹にある洞窟に登った。ところが、座ろうとした途端に山が3回にわたって震動したそうだ。山の神が出てきて、「この山は悟りを開かれるのにふさわしい場所ではありません。この地の南東にあるアシュヴァッタ樹の下がふさわしい場所です」と、告げたんだって。そんなわけで、今はこの山を前正覚山【ぜんしょうがくざん】と呼んでいる。 

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 シッダールタが瞑想しようとした洞窟は留影窟と呼ばれているんだけど、残念ながら僕はまだ行ったことがない。なんで留影窟かというと、この山に住んでいた竜がどうしてもここでお悟りを開いて欲しいと頼んだんで、シッダールタが自分の影を置いてここを去ったからだそうだ。

 さあ、この山は降りたシッダールタはついにアシュヴァッタ樹の下で悟りを開くことになる。(つづく)
  
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【 2014/05/07 11:01 】

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