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なまぐさ坊主の聖地巡礼

プロフィール

ホンジュン

Author:ホンジュン
日蓮宗の小さなお寺の住職です。
なにしろ貧乏なお寺ですので、松井秀樹や本田圭佑で有名な星稜高校で非常勤講師として2018年3月まで世界史を教えていました。
 毎日酒に溺れているなまぐさ坊主が仏教やイスラーム教の聖地を巡礼した記録を綴ってまいりましたが、これからしばらくは世界史のミラクルワールドをお届けします。

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ブッダの弟子たち その6


ブッダを知りませんか?

ウパーリ(優婆離【うはり、うぱり】)

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中村晋也作『薬師寺・釈迦十大弟子』

 ウパーリは、もとシャカ族の宮廷の理髪師だった。世界史で習ったと思うけど、インドにはジャーティと呼ばれる集団がある。いわゆるカーストなんだけど、理髪師のジャーティはナーイ。ヴァルナ制の4つの階級、覚えてる?そう、バラモン・クシャトリヤ・ヴァイシャ・シュードラの順だったよね。インドでは人間の体から排出されるものを扱う職業は賤しいものとされ、ナーイは最下層のシュードラに属している。シュードラはバラモン教の聖典であるヴェーダを学習することすら許されていなかった。

 前回の話の続きになるんだけど、ナンダとラーフラを出家させたブッダがカピラヴァッツを出発すると、シャカ族の貴公子6人が出家するためにそのあとを追った。バッディヤ、アヌルッダ、インビラ、バグ、アーナンダ、デーヴァダッタの6人。そうそうたるメンバーだね。あれっ、バッディヤって、前回のお話でスッドーダナ王がシャカ族の王に指名したブッダの従兄弟だったよね。王になったばっかりなのに出家しちゃったんだね。それから、アーナンダは前々回にお話ししたし、アヌルッダは次回お話しするね。もう一人、デーヴァダッタも重要人物なんで、またいずれお話することになる。そして、この6人の付き添いを命じられたのがウパーリだった。

 シャカ族の土地の境界を出ると、6人は黄衣に着替え、脱いだ衣服とはずした装身具をウパーリに渡した。「これをお前にあげよう。出家しようとしている私たちには必用ないものだから。カピラヴァッツに帰ってそれらを売り、お金に換えなさい」と言って、立ち去ってしまった。ウパーリは一人歩き始めたが、しばらくして歩みをとめ、こう考えた。「私は貧しい階級で何も持たないけど、ブッダは階級にかかわらず平等だと言っている。我々シュードラはヴェーダを学ぶことを許されていないが、ブッダならきっと受け入れてくださるに違いない。私も出家しよう」。そう決意すると、渡された衣服・装身具を袋に入れて木の枝にくくりつけ、6人のあとを追った。追いかけてきたウパーリを見た6人は不審に思ったが、ウパーリの出家の決意を聞くと喜んで、7人そろってブッダのもとへ行った。

 さあ、ここで問題になったのが7人のうち誰が一番初めに得度するかだ。


 得度は仏門に入って坊さんになることなんだけど、僕は14歳の時に得度している。剃髪【ていはつ】(髪の毛を剃り落とす)し、仏・法・僧の三宝に帰依することを誓い、ブッダから戒を授かる儀式が行われる。仏教教団では、その出身階級、貧富の差などはまったく問題にされず、その人がどれほどの修行を積んだかが重視され、仏教教団に入ってからの年数が修行者の上下を決める基準とされた。得度からの年数を法臘【ほうろう】と言うんだけど、これが教団内の序列の基準となった。実年齢はいっさい関係ないし、能力もまったく関係なく、ほんとうの年功序列だ。封建的って言われるかも知れないけれど、僕はこれがベストだと思う。僕は22歳の時に僧侶の資格を得て住職になったんだけど、加賀地方の日蓮宗では住職になった順で序列が決まっていて、僕は7位。これが、実年齢だと25位になる。別に威張りたいから言ってるんじゃないよ。坊さんには僧階というのがあるんだけど知ってる?ああ、そうかい(笑)。僧階の順にすればという人もいるけど、僧階はお金さえ出せば上がっていくから、大寺優位になっちゃうでしょ。だいたい坊さんに階級があること自体がおかしいよね。寺には格式があるけど、これによる順番も駄目。お年をめされてから出家する人もいるんで、実年齢による順も駄目。結局、住職になった順が一番ベストなんだ。

 話が横道に逸れちゃったけど、7人の中で一番初めに得度したのがウパーリだった。「長い間理髪師として私たちに仕えてきたこのウパーリを先に出家させて欲しい。教団における先輩として合掌して敬うことにしたい。それによって私たちシャカ族の高慢さを除くことにしたい」と、6人がブッダに申し出たからだとされているけど、僕は違うと思う。カースト制のもとでは違うカーストの者同士は結婚出来ないし、一緒に食事をすることも出来ない。カーストが下位になればなるほど、汚れが強くなると考えるからだ。シャカ族の6人はヴァルナでは第2位のクシャトリヤ階級だ。汚れた階層であるシュードラとの間には厳然たる格差があり、6人が出家前からウパーリを対等に扱う心を持っていたとは考えにくい。ここはやはりカーストを否定するブッダのはからいと見た方がいいと思う。

 教団では後輩の修行者は先輩の修行者に礼拝しなければならない決まりになっている。6人の貴公子はブッダに命じられてウパーリを礼拝したものの、初めのうちは心から納得してそうしたわけではなさそうだ。その証拠に『大荘厳論経』という経典には、ウパーリを礼拝するように命じられた貴公子たちが「われら由緒ある日種族(スーリヤ・ヴァンシャ)に属する高貴の家柄のものが、どうしてシュードラ出身のウパーリを礼拝できましょうか」と言って、ブッダに食い下がる姿が描かれている。

 しかし、ブッダは教団内部においては出身階級を問わない、完全平等主義をとった。修行者たちはすべて「同梵行者」=清浄の修行をともにする者、あるいは「同行者」=ともに住む者と呼ばれた。すなわち、すべての修行者が同等の資格で修行するのであり、教団内のさまざまな審議や決定事項は、全員が同一の権利で票決する形式がとられていた。わずかに席次の上下だけが、得度してからの年数によって決められていただけだ。

 『スッタニパータ』にブッダの有名な言葉がある。

「生れによってバラモンとなるのではない。生れによってバラモンならざる者となるのでもない。行為によってバラモンなのである。行為によってバラモンならざる者なのである。」

 また、『雑一阿含経』には、

「四大河水あり……恒河(ガンジス河)、新頭(インダス河)、婆沙(オクサス河)、私陀(シーター河=今日のタリム河)……海に入りてまた本の名字なし。かくの如く、四姓あり……クシャトリヤ、バラモン、長者、居士の種なり。如来のところにおいて鬚髪【しゅはつ】を剃除【ていじょ】し、三宝衣を着し、出家学道すれば、また本姓なし。ただ沙門釈迦子と言うのみ」とある。

 ブッダはカーストを否定した。だからこそ、仏教はアジアを中心に広まり世界宗教となった。だけど、残念なことにカーストを否定したから、仏教はインドに残れなかったんだ。

 ブッダの教団には社会の最下層に属していたと思われる修行者もたくさんいたようだ。その一人であるスニータ長老は、在俗の日々を思い出しながら次のように述べている。「私は卑しい家に生まれ、財に乏しかった。卑しい仕事に従事し、糞尿を掃除する者であった。人々に忌み嫌われ、軽蔑され、罵られた。私はいじけながら多くの人々を敬礼していた。」(『テーラーガーター』)この記述を読む限り、スニータ長老は恐らく不可触民の出身であったと思われる。不可触民、英語で言えばアンタッチャブル、つまり触っていけない人々という意味である。なぜならば、彼らはカーストの枠にも入らない、最も汚れた人々と考えられているからだ。彼らは自らをダリッドと呼ぶ。ガンディーは彼らをハリジャン、すなわち「神の子」と呼んだが、これには批判意見もある。ブッダはスニータにこう語った。「熱心な修行と清らかな行ないと感官の制御と自制と、……これらによって、人はバラモンとなる。これが最上のバラモンたる境地である。

 ウパーリも同様の教えを受けたのであろう。ウパーリはよく戒律を守り、他の修行者が戒律にふれる行いをした時には、ブッダの教えにもとづいて公平にそれを裁定し、十大弟子の中で「持律第一」と称されるようになり、ブッダ亡き後、ラージャガハで行われた第一結集では、戒律をまとめ上げる責任者となっている。

 ちなみに、僕たちが読む『法華経』の登場人物には当然ブッダの十大弟子が入っているんだけど、なぜかウパーリだけが登場していない。すべての人が仏となれることを説く法華経が、シュードラ出身だからといってウパーリを除いたとは考えられないんだけど、いろいろ調べても理由がわからないんだ。このブログを読んだ方で理由をご存じの方がいたら、ぜひコメントお願いします。(つづく)



 
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テーマ:歴史 - ジャンル:学問・文化・芸術

【 2014/07/19 12:05 】

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